web広告のインハウス運用とは?メリット・デメリットを徹底解説!

web広告のインハウス運用とは?メリット・デメリットを徹底解説!

1.web広告運用の新たな潮流、インハウス化とは?

近年、インターネット上のweb広告市場は拡大の一途をたどっています。企業はweb広告を利用して新規顧客獲得や宣伝に注力していますが、その運用広告の多くは代理店などの外部業者へ委託されている状況です。

しかし、代理店に委託することで「広告費の手数料がかかる」「ノウハウが社内に蓄積されない」といったデメリットも発生します。こうした背景から、企業が事業戦略を高めるために、広告主が自社で行う「インハウス運用(内製化)」が、大きな注目を集めています。

インハウス化は、単なるコスト削減策ではなく、企業のマーケティング知識やノウハウを蓄積し、中長期的な成長基盤を築くための重要な一歩です。特に、Webデザイナーや転職先を探している人にとっては、インハウスマーケッターという新しいキャリアの選択肢にもなりえます。

運用型広告におけるインハウスの位置づけ

Web広告におけるインハウス運用とは、広告主である企業が、運用広告にかかる全ての業務を外部の代理店や外部業者に任せることなく、社内の担当者やスタッフで完結させることを指します。

このインハウス化の主な対象となるのは、運用型広告です。
<運用型広告とは?>Google広告やYahoo!広告(検索連動型広告、ディスプレイ広告)、Meta広告(Facebook/Instagram)、X(旧Twitter)広告など、広告費や設定をリアルタイムで変更し、成果に応じて改善を進めるタイプのWeb広告です。

従来の代理店への委託では、代理店の担当者に丸投げするケースも多く、自社の担当者はレポートを受け取るだけの場合も少なくありませんでした。これに対し、インハウス化では、様々な業務を自社で行えるようになります。

社内で発生する業務

インハウス化によって、社内の担当者が行うことになる業務は多岐にわたります。これらは一つとして欠くことができない、成果を高めるために必要な業務です。
社内で発生する業務
これらの全ての業務を自社で行えるようになることこそが、インハウス運用の本質です。これにより、代理店への委託手数料として発生していた金額がかかることなく、自社のノウハウとして蓄積されていくのです。

2. インハウス化を進めるメリット【成果を高める3つの柱】

企業がインハウス化に注力する最大の理由は、中長期的な視点で事業の成長戦略を高めることができるからです。

ノウハウと知見の社内蓄積と資産化

代理店に委託している場合、広告の運用広告データや改善のノウハウは代理店側に蓄積されてしまうことが多くあります。代理店を変える場合、全てをまたゼロから始める必要が発生します。

<具体例:製業界のニッチな商品ケース>非常に専門性の高い商品を扱う製業界の企業が、インハウス化を行う場合を考えます。

  • 外部業者:商品の理解が浅く、知識が少ないため、一般的なキーワード設定やクリエイティブ施策にとどまる。
  • インハウス:自社のスタッフは商品を理解し尽くしているため、代理店では思いつけないような専門用語を広告文に利用したり、業界特有の顧客心理に響く事柄をWebデザイナーと協力して作成し、成果を高めることができる。この知識こそが企業の資産となります。

広告費のコスト削減と予算の最大化

インハウス化の分かりやすいメリットの一つが広告費のコスト削減です。代理店に委託する場合、広告出稿金額の10%~20%程度が委託手数料(マージン)として発生します。

<試算ケース>月間広告費が300万円の企業が、委託手数料20%の代理店に任せる場合、毎月60万円の手数料がかかることになります。年間では720万円です。

インハウス化し、優秀な人材(担当者)を一人採用した場合、その人件費が上記の手数料を下回る場合、コストは削減されます。削減できた金額は、全てを広告費の予算に注力したり、新しいマーケティング施策に利用したりできるため、企業にとって大きなメリットとなります。

広告費が月100万円未満の企業では、まだ手数料よりも人件費の方がかかる場合もありますが、300万円以上の金額を使う企業では、コスト削減は高い確率で実現します。

PDCAの高速化と状況への即時対応

代理店を利用している場合、施策を一つ実行するにも、「社内の担当者 → 代理店担当者 → 運用チーム → 媒体設定」と様々な工程と人を経る必要があり、多くの時間がかかります。
インハウス化では、社内で全てを行えるため、このコミュニケーションロスが解消されます。

<具体例:緊急のLP改善ケース>突発的な市場の状況変化や競合の新しいサービスリリースにより、ランディングページ(LP)の改善が必要となった場合を考えます。

  • インハウス:担当者がアド分析で効果を確認し、すぐにWebデザイナーと協力して改善し、数時間以内に新しい設定を行える。
  • 代理店委託:担当者が代理店に改善を依頼し、代理店が社内に依頼し、デザイン修正、クライアントの承認と、数日~数週間かかってしまう場合がある。

状況への即時対応と迅速な改善サイクルは、成果を高める上で欠くことができない、インハウス運用の高い優位性です。

3.インハウス化のデメリットと危険性【失敗ケースを考える】

インハウス化はメリットばかりではありません。企業が判断を誤ると、かえって広告効果が下がる危険性や、社内に過度な負担がかかるデメリットも発生します。

専門性を持つ人材の確保と育成が必要

インハウス化の最大の課題は「人」です。web広告運用をはじめSEO対策等の知識はもちろんのこと、経験が豊富なマーケッターや担当者を社内に持つ必要があります。

<失敗ケース:安易な兼任導入>広告費の手数料を惜しみ、Webデザイナーや営業担当者に「ついで」で広告運用を任せるケース。
結果:担当者は本業と運用の業務でリソースを割かれ、どちらも中途半端になる。運用広告の設定は複雑で知識が必要なため、成果が下がり、広告費が無駄にかかる結果になってしまう。インハウス化は、人材の採用や育成にいくらの予算を割けるかを考える必要があります。

業務工数の増加とリソースの圧迫

代理店に委託していた場合、全ての業務が社内に発生します。

  • アカウント設定・管理
  • クリエイティブの全ての制作
  • 代理店から上がってくる様々なデータ分析とレポート作成

担当者が一人で全てを行う場合、リソースが限られているため、業務負担が多く、コア業務への注力ができなくなってしまう。社内に専門性を持つスタッフが少ない場合、業務が特定の担当者に集中し、その担当者が休職や退職した場合、運用が停止する「属人化」という危険性も伴います。

最新情報のキャッチアップと知見の不足

広告媒体(Google、Metaなど)のトレンドレポートやアルゴリズムは日々更新されます。外部業者/代理店は様々なクライアントの経験から最新情報や知見を蓄積していますが、インハウスでは自社の状況しか知り得ません。

<課題のケース>新しい広告媒体や機能が導入された場合、代理店はすぐに対応し、他社事例から成功パターンを比較分析できます。インハウス担当者は自ら新しい知識をキャッチアップし、手探りでテストする必要があり、対応タイミングが遅れてしまう場合があります。

この専門性の維持とキャッチアップの労力は、インハウス化の欠くことができない大きなデメリットの一つです。

4. インハウス化の判断基準と導入タイミング

企業がインハウス化に踏み切るべきかどうかは、メリットとデメリットを全て比較し、自社の状況を理解した上で判断することが必要です。

インハウス化を検討すべき企業の判断基準

特に広告費が多くかかる企業ほど、インハウス化のメリットは高くなります。
インハウス化を検討すべき企業の判断基準

代理店から自社へのスムーズな移行ステップ

インハウス化の導入タイミングは重要です。

  1. 引継ぎ期間の設定:外部業者/代理店に協力を依頼し、3~6ヶ月程度の期間を設ける。
  2. 知識の徹底理解:代理店の担当者から、アカウント設定、過去の施策、分析方法の全てを社内スタッフが理解し、知識を蓄積する。
  3. 部分運用からの開始:全ての媒体をいきなり任せるのではなく、成果が安定している一つの媒体や業務からインハウスで行えるように進める。
  4. 外部サポート利用:初期の不安定な時期は、代理店と契約を変えてコンサルティングサポートを利用し、自社の担当者の育成支援を受けるのも良いケースです。

この段階的な導入を行うことで、広告効果を下げることなく進めることができます。

5. Webデザイナー・転職者へ:インハウスマーケッターというキャリア

インハウス化は、Webデザイナーや転職を考える人にとって、新しいキャリアを持つ良い機会となります。

インハウスマーケッターのやりがいと魅力

インハウスのマーケッターは、代理店のクライアント担当者とは異なるやりがいがあります。

  • 事業への深い理解:自社の商品/サービスに最も近い担当者として、事業の成長戦略を考えることができる。
  • 成果が直接見える:自身の施策が売上や新規顧客に直接貢献する成果が見えるため、高いモチベーションを持つことができる。

この経験は、将来マーケティング責任者や事業責任者を目指す上で非常に重要な知見となります。

Webデザイナーのスキルが活きる業務

Webデザイナーは、インハウスマーケティングチームで即戦力として活躍できる人材です。運用型広告の成果は、設定や予算だけでなく、「クリエイティブ」に大きく左右されます。

  • クリエイティブ改善:Webデザイナーがアド分析の知識を持つことで、どのバナー広告や動画が効果が高いかを判断し、自身のデザインで改善を進めることができる。
  • LP改善:分析データに基づき、直接ランディングページのデザインや導線を改善し、コンバージョンを高める施策に注力できる。

Webデザイナーとして一つ上の知識(アド分析、比較/改善)を持つことは、転職活動において非常に強い武器となります。

転職活動で求められるインハウス担当者のスキル

企業がインハウス担当者に求めるのは、単なる運用スキルだけではありません。

  • 高い分析スキル:データを分析し、本質的な課題を発見する知識。
  • 事業理解力:自社商品への深い理解と、事業戦略に沿った施策を考える力。
  • 社内協力対応力:Webデザイナーや営業担当者、経営層など社内の様々な部署と連携し、全てを進める調整能力。

まとめ

Web広告のインハウス運用は、企業のマーケティングノウハウを蓄積し、広告主としての専門性を持つことで、中長期的な事業の成長を高めるための戦略です。

広告費のコスト削減やPDCA高速化といったメリットがある一方で、人材確保の難しさや業務リソースの圧迫といったデメリットも全て踏まえる必要があります。

インハウス化は「良い」か「悪い」かの二択ではなく、自社の予算、人材、事業戦略を総合的に比較検討し、適切な判断基準をもって進めることが重要です。