web広告のインハウス運用とは? メリット・デメリットを解説

web広告のインハウス運用とは? メリット・デメリットを解説

現代のWebマーケティングにおいて、広告内容や予算をリアルタイムで最適化する「運用型広告」は業種業態を問わず不可欠な存在となりました。Web広告の運用において、企業は外部の広告代理店に委託するケースや、自社スタッフが広告運用を行う「インハウス」の手法を選択するケースがあります。

多くの企業がインハウスでの広告運用を採用する中、その導入に際しては検討が欠かせません。この記事では、インハウス導入における広告費を判断する際の目安に焦点を当て、そのメリットとデメリットを詳しく掘り下げていきます。

インハウスとは?

「インハウス」は、ビジネス用語として用いられる場合、文字通りには「社内」「組織内」「企業内」といった意味を持ちます。
一般的には、企業が特定の業務を外部に発注・委託するのではなく、自社内のスタッフや組織でその業務を遂行する形態を指します。これは俗に「内製化」とも呼ばれ、業務を外部業者に外部委託することなく、内部のリソースを活用して行う手法です。対義語としては「アウトソース」(外部委託)が挙げられます。

また、「インハウス」は業務形態だけでなく、特定の職種に所属する自社のスタッフを、外部の委託先や他の組織と区別する場合にも使用されます。例えば、「インハウスデザイナー」や「インハウスエンジニア」などが該当します。

web広告運用のインハウス化について

Web広告運用のインハウス化は、外注せずWeb広告の運用に関わる全てのプロセスを企業内で完結させる取り組みを指します。

運用型広告においては、予算の管理、広告戦略の構築から広告媒体の設定、クリエイティブ作成、レポーティング、最終的な考察・改善まで、多岐にわたる業務が求められます。これらのフローを企業内で一貫して手掛けるケースと、一部を外部に委託し特定の業務に重点を置く形態が存在します。

インハウス化の最大のメリットは、広告代理店に発生する手数料を削減できることです。企業は限られた予算内で最大の広告宣伝効果を追求する中で、このコスト削減は大きな魅力となっています。担当者の負担も生じにくく近年では、企業のインハウス化をサポートする広告代理店のサービスも登場し、ノウハウの提供をうけて成功を生じる広告主もいます。

一方で、インハウス化によって正しく回らず成果に繋がらない場合もあります。実際に試みたものの、効果がなく工数だけが増加し、最終的には代理店に戻すといったケースも珍しくないです。したがって、インハウス化は単純な判断ではなく、メリットとデメリットを理解した上で正しく検討し運用を行いやすく整えましょう。

重要なのは、「他社がやっているから」「トレンドだから」といった理由ではうまくいきません。具体的な広告の運用成果向上を見据えた冷静な判断です。インハウス化には様々な側面があるため、企業独自の状況や目標に合わせた戦略的な判断が求められます。

インハウス運用のメリット

インハウス運用のメリット

広告をインハウスで運用する主なメリット4つについて説明します。

コスト削減 

前章で触れた通り、インハウス化による一番のメリットは、広告代理店への委託に伴う手数料が発生しない点です。
通常、広告代理店に広告運用を委託すると、その運用手数料が広告費の一部として発生します。多くの代理店では一般的に「広告費の20%」といった割合で手数料が設定されています。例えば、月間の広告費を100万円とすると、別途20万円の運用手数料が広告代理店に支払われる仕組みです。

マーケティングで成果を上げるためには十分な広告費が必要ですが、その広告費が増加すると代理店への手数料も相応に増加します。このコストに見合った運用成果を得られない場合、企業にとっては大きな損失となり悪い結果を招くことも珍しくありません。

一方で、広告運用をインハウス化できれば、運用手数料を支払う必要がなくなります。もちろん、運用担当者の人件費なども考慮する必要がありますが、一般的にはコスト削減が期待できるでしょう。

スムーズな広告運用をおこなえる

広告運用のインハウス化すると、運用業務を全て社内で一貫して行うことになるため、運用の担当者・関係者同士が、相互のコミュニケーションもとりやすく綿密な連絡が行いやすくなるため、伝達ミスや勘違いなどのヒューマンエラーが生じにくくなります。また、社内での意思決定が実運用に反映されることがスピーディーになり、突然起こる出稿停止、予算調整といった広告運用上での不測の事態にも早い対応ができます。

広告運用のノウハウを社内に蓄積できる

自社スタッフで広告運用を行うことで、運用ノウハウが実地の経験から蓄積されるのもインハウス化の大きなメリットです。自社スタッフが専門知識を身に付けることで知識のある人材が社内に増えていくと、より効果の高く実現性がある広告戦略を実践できるでしょう。運用業務を将来外部委託になっても、知識・ノウハウを持ったスタッフが担当者となり、広告運用を的確にコントロールできます。

逆に、広告代理店に全てを依存すると、代理店の言いなりになる危険があります。成果が出ているうちは問題ありませんが、パフォーマンスが悪くなった際には、担当者の施策や改善提案を適切に評価できません。

また、代理店との関係が終了した場合、自社にノウハウとそれまでの経緯が蓄積されていないため、新しい委託業者に適切な引き継ぎができず、一から広告運用を再開始することが避けられません。
運用型広告をインハウスで運用する場合は、広告代理店の元で様々な広告メニューや機能を試してみたり、広告クリエイティブのABテストもスピーディーに実施できます。迅速な対応が可能なため、試行回数も増やし、多くのナレッジを蓄積できます。これに対し、広告代理店に依頼する場合は代理店のナレッジに依存するため、社内にナレッジを蓄積しにくいという課題がのこることも珍しくありません。

商品・サービスを理解した上で広告運用が行える

運用型広告の運用担当者はweb広告戦略においてマーケティングを行う商品・サービスについて深い理解が必要です。ターゲティングや広告媒体の選定、クリエイティブの内容など広告運用の精度に商材の理解が直結しています。また、多くの事業においてWeb広告だけがマーケティングを構成する方法ではありません。他の施策とのバランスをとりながら事業状況に見合ったリソースをWeb広告運用に割く必要があります。
これらの観点から、事業や商材に理解のある自社スタッフが広告を運用するインハウス化は合理的な方法です。逆に、クライアントの業界やサービスに十分な知見のない代理店や委託業者だと、見当違いの提案や施策が行われることも多くあります。

インハウス運用のデメリット

インハウス運用のデメリット

 広告運用のインハウス化は、良い効果ばかりではありません。3つのデメリットについて解説します。

専門的知識がある担当者が必要

Web広告運用には、基本的な広告媒体の理解から始まり、様々な広告フォーマットや成果指標に関する広範な知識が必要です。インハウス運用では、このようなWeb広告に特化した専門知識と経験豊富なスタッフが不可欠です。選択肢として、外部の経験豊富なマーケッターを雇用するか、または自社のスタッフを育成することが考えられます。

前章で挙げたように、インハウス化による手数料削減はコストメリットの一例ですが、今日ではWebマーケッターの人材不足が深刻な問題となっています。優れた人材を確保するためには高額な固定給が必要であり、無計画にインハウス化を行うと人件費を膨張させ、かえってコストダウンの本末転倒を招く可能性があります。中長期的な費用対効果を検討し、計画的に進めることが重要です。
また、広告運用の場合、社内での運用担当者が不可欠です。代理店に外部委託する場合は、担当者の必要性が低減しますが、その代わりに運用手数料が発生します。インハウス運用の際は、運用担当者の人件費がかかりますが、代わりに運用手数料は発生しません。両者のメリットとコストをバランス良く検討し、最適な選択をすることが求められます。

市場や競合他社の入手が困難

インハウス運用では、市場や競合他社の情報が限られてしまいます。自社が運用を担当する場合、外部の視点からの情報にアクセスする機会が制約され、競合他社の広告戦略や最新動向を正確に把握することが難しくなります。この制約は、広告の運用戦略や訴求の工夫においてマイナスの影響を及ぼす可能性があります。

また、市場や競合他社の情報が不足していると、運用の比較が難しくなります。競合他社の成功事例や失敗から学ぶことは、自社の広告戦略を高め洗練させる重要な手段ですが、情報不足では有効な比較が行えず、「引き出し」が減り適切な戦略が難しくなります。

さらに、業種や商品・サービスに関する十分な情報が得られない場合、運用の最適な戦略やアプローチを見つけることが難しくなります。適切な広告訴求やアカウントの最適化には、業種や商品に特有のニーズや特長を理解することが不可欠ですが、十分な情報がないと効果的な戦略が難しくなります。

最終的には、データに基づく数値目標やCV率を高めるためには、市場や競合他社との比較を通じて学ぶことが欠かせません。インハウス広告運用においては、情報収集の重要性を認識し、外部との連携や情報共有を積極的に行うことが求められます。

新規情報のキャッチアップが難しい

広告運用担当者は、常にアンテナを張り、トレンドの変化に適応が必要です。広告代理店はネットワークをフル活用して情報のキャッチアップを行っており、また広告媒体側からの情報を得ることができます。インハウス運用では自社の運用担当者が独力で情報収集を行わねばなりません。Web上の情報検索だけでなく関連の書籍やウェビナーというGoogle等が主催するものを活用しましょう。

インターネット業界のトレンドは日々変遷を続けています。現在はYouTubeやSNSでの動画広告が主流ですが、流行り廃りの激しいため先のことは分かりません。

また広告媒体のフォーマットも頻繁にアップデートされています。実績もある経験豊富なマーケッターでも、継続的に新しい知識やスキルを習得し自分の知識を高めなければWebマーケティング最前線では勝ち残れないのが現状です。

インハウス導入の判断の目安

インハウス導入の判断の目安

ここまで広告運用をインハウス化するメリットとデメリットについてご説明してきました。各企業の状況を踏まえ導入のメリット・デメリットを比較した上で、総合的に正しく判断しましょう。
導入要否についての判断の目安について考えていきます。

広告費による判断の目安

企業がインハウスの導入是非を判断する上で分かりやすい目安としているのが「広告費」です。
外部業者に広告運用を委託する手数料は広告費に比例して発生します。この手数料と、インハウス化した場合に必要な人材獲得の経費を比較して判断するものです。具体的に表に表してみます。

広告費が100万円未満で委託手数料が20万円以下の場合、少なくとも費用面ではインハウス化のメリットはないと言ってよいでしょう。一つの目安として、「広告費が100万円以上になったらインハウス運用を検討し始めるタイミング」です。
次のタイミングは、広告費が300万円以上になった時です。
従業員を会社で一人雇うには、社会保険などを考えると一般的には給与の1.5倍前後を負担すると言われています。300万円の広告運用を外部業者に委託する場合に発生する手数料は60万円。マーケッターを雇い月収40万を払えます。この段階だとインハウス化を考えるタイミングです。

さらに広告費500万円以上となると手数料は毎月100万円、実質月収70~80万円の人材を雇える金額です。良い人材さえ見つかれば、迷わずインハウス化のタイミングです。

インハウス代理店
100万円未満×
100~300万円未満
300万以上
500万円以上×

その他判断基準

インハウス導入の判断基準となる広告費以外。主なものは次の3つです。

  • 企業としてWeb広告に注力をどのくらいするか
  • 広告運用を任せられる人材を用意できるか
  • Web広告運用ノウハウを社内に蓄積したいか

新しいインハウス運用の形

新しいインハウス運用の形

広告代理店に運用業務を任せていた企業が、完全なインハウス化を短い期間で実施しようとしても、人材や情報収集能力、継続性、運用ノウハウ、経験などの問題が起こります。その結果、インハウス化を諦めてしまう企業も少なくありません。
運用経験が豊富な広告代理店の知見を取り入れながら、段階的にインハウス化を目指すことが合理的です。
「代理店に委託か、インハウスか」という二者択一ではなく、「ここは広告代理店に任せ、この業務は自社で」といった新しい形で運用する選択もあります。

代理店に一任は危険

広告運用への考え方は各社様々ですが広告代理店に一任し丸投げは危険です。代理店に一任すると企業の業務の負担は最低限ですが、運用成果が出るとは限りません。理由の一つは商材・サービスなどの理解が不十分だからです。商材・サービスの理解と市場動向・競合他社の知識が揃わないとメインターゲットに対し適切なキーワード・訴求力の強い広告ができません。
沢山のクライアントを抱えている代理店担当者に企業側も協力し関係性を築いたほうがうまくいく可能性が高まり、業務の内容を高めスムーズに行えます。
広告代理店に丸投げせず広告主も広告運用に積極的に関わりながら広告運用を進め高めましょう。

まとめ

この記事では、企業のWeb広告運用のインハウス化について取り上げました。インハウス運用にはコストカットなどのメリットもありますが、メリットばかりではないということもわかっていただけたかと思います。
インハウス化を進めた結果失敗に終わる可能性もあり、広告宣伝の機会を失い損失につながりかねません。コスト面だけではなくの様々な状況を考え導入のタイミングをはかりましょう。
この記事をきっかけに「広告運用の最適のカタチは何か?」と考え、広告運用の改善につなげていただければ幸いです。
また、運用型広告で大切なのは配信結果を継続的に分析し・考察しながら改善点を見つけ起動修正していく、というPDCA*の実践も重要です。
*PDCAとは、Plan(計画)、Do(実行)、Check(評価)、Action(改善)の4つのプロセスを繰り返し、業務効率を改善するフレームワークのことです。