広報とPRの違いは?広報担当者が知っておきたい定義・実例を解説!

広報とPRの違いは?広報担当者が知っておきたい定義・実例を解説!

広報とPRの違いについて、広報担当者が知っておきたい基礎知識を解説します。

最近広報担当者になった方だけでなく、現在広報の担当をされている方も、広報とPRは何が違うのか認識が曖昧で正しい説明ができないという方も多いかもしれません。実際に筆者も企業の採用面接で広報とPRの相違点を問われうまく説明できなかった経験があります。

本記事では、広報とPRの意味の違いを初心者にも分かりやすく説明するとともに、広報およびPRそれぞれの言葉の定義や企業での役割、具体的な仕事内容も併せて解説します。

広報とPRの意味の違い

広報とPRの意味の違い

結論から言うと、広報とPRはどちらも英語でPublic Relations(パブリックリレーションズ)となり、本来同義です。しかし、日本企業では実務上「広報=会社の信頼構築」「PR=マーケティング寄りの施策」という使い分けをされることが多いです。本記事では日本企業では広報とPRをどう使い分けているかについて分かりやすく比較しながら説明します。

広報(パブリックリレーションズ)PR(パブリックリレーションズ)
目的企業や団体そのものの信頼や理解を得る商品・サービスやキャンペーンのための発信
役割
  • 会社と社会の橋渡し役
  • メディア対応
  • 社内広報
  • 危機管理
  • 商品やサービスを広めるための情報発信
  • マーケティングに近い手法(SNSやイベントなど)
  • 「話題を作る」「バズらせる」仕掛け・キャンペーン
対象ステークホルダー(顧客、社員、株主など)社会全体(個人・集団・社会)を含む広範な対象
特徴・イメージ誤解をなくし、信頼を築く「信用作りの仕事」(守り・長期的)売上やブランド認知のために「攻めの発信」をする仕事(攻め・短期的)

広報とPRの違いが分かりにくいのはなぜ?

広報とPRの違いが分かりにくく、混同される要因は以下のとおりです。

歴史的背景と和訳による差異

「広報」という言葉は、GHQによる戦後の民主化政策の目的として導入された「Public Relations(パブリックリレーションズ)」を日本語に翻訳したものですが、訳語として「報せる」というニュアンスが強い場合と、「関係」を重視する場合で捉え方が異なります。

業界や文脈による使い分け

業界や使われる場面によって捉え方が異なるのも要因です。例えばPR会社や広告代理店では「PRが上位概念、広報はその一部」とする傾向があり、マーケティング系メディアでは「広報が発信役、PRが関係構築」とする傾向があり、日本企業の社内用語とは逆の意味で捉えられています。

双方向性の重視

SNSやデジタルメディアの発展により、情報発信が一方通行ではなくなってきたため、PRの定義を「相互コミュニケーションを含むもの」とする説明が増えてきています。

広報とは

広報とは

広報はステークホルダーとのコミュニケーション全般を担う仕事で、企業にとって広報担当者は社内外の顔ともいえる重要な役割をもちます。広報の定義や企業での役割、具体的な仕事内容について説明します。

広報の定義・意味

2023年6月20日に日本広報学会が発表した「広報」の定義は以下のとおりです。

組織や個人が、目的達成や課題解決のために、多様なステークホルダーとの双方向コミュ ニケーションによって、社会的に望ましい関係を構築・維持する経営機能である。
(参考:日本広報学会

つまり、企業にとって「広報」のもつ意味は、自分たちの活動や考えを相互コミュニケーションをとおして社会やステークホルダーに正しく理解してもらい、信頼を築くための活動だといえます。

広報の役割・目的

企業にとって広報の仕事の目的は、ステークホルダーと望ましい関係を構築して自社のファンを増やすことで、ブランドイメージの向上や企業価値の最大化につなげることです。その目的を達成するため、あらゆる情報発信によりステークホルダーと相互にコミュニケーションをとり、企業そのものの信頼性や社会的価値を伝えることが広報の役割です。

広報の仕事内容

広報の仕事内容は幅広く多岐にわたりますが、大きく分けると「社外広報」と「社内広報」になります。それぞれの仕事内容や特徴を詳しく説明します。

社外広報

社外広報とは、社外のステークホルダーに向けた広報のことで、さらに「コーポレート広報」と「サービス広報」に分類されます。

コーポレート広報

コーポレート広報とは、個々の商品やサービスではなく、企業自体や企業全体の活動、理念、ブランド価値についてステークホルダーに発信する活動です。企業ブランディングや企業文化の醸成、ステークホルダーとの関係構築などを目的とします。コーポレート広報の具体的な仕事内容は以下のとおりです。

  • オウンドメディアやSNSの更新
  • プレスリリースの作成・配信
  • メディア等からの問い合わせ対応
  • コーポレートサイトや求人票のチェック
  • 株主・投資家向けのIR情報発信
  • イベントの企画・運営
サービス広報

サービス広報とは、自社の商品やサービスの特徴や魅力をステークホルダーに発信する活動で、最終的に購買やサービスの利用につなげることが目的です。サービス広報の具体的な仕事内容は以下のとおりです。

  • オウンドメディアやSNSでの情報発信
  • プレスリリースの作成・配信
  • 記者会見やプレスセミナーの企画・実施
  • キャンペーン企画の実施
  • 展示会などイベントへの出展

社内広報

社内広報とは、社内のステークホルダーである従業員やその家族に向けた広報のことで、企業と従業員との結びつきや関係性、従業員のモチベーションを高めて生産性を向上させ、組織の拡大・発展につなげることを目的とします。社内広報の具体的な仕事内容は以下のとおりです。

  • 社内報の発行
  • 社内向けイベントの企画・実施
  • 経営層メッセージの配信
  • 社外からのフィードバックや調査結果の共有
  • 社内SNSやチャットツールを利用したオンライン社内コミュニティの運営

PRとは

PRとは

PRの定義・意味

「PR」は英語でPublic Relations(パブリックリレーションズ)となり、本来「広報」と同義です。アメリカで教科書として定評がある『体系パブリック・リレーションズ』ではPRについて以下のように定義しています。

パブリックリレーションズとは、組織体とその存続を左右するパブリックとの間に、相互に利益をもたらす関係性を構築し、維持するマネジメント機能である。
(参考:公益社団法人日本パブリックリレーションズ協会

つまり、広報とPRはどちらも「関係性の構築し、維持するマネジメント機能」であり同義です。一方、日本の企業ではPRをマーケティング寄りの施策として捉えられることが多く、広報のうちの「サービス広報」と同義で説明されます。

PRの役割・目的

企業にとってPRの仕事の目的は、自社商品の購入やサービスの利用を促進し、ブランド認知につなげることです。その目的を達成するため、SNSやイベントなどあらゆる手法で話題を作り、自社の商品・サービスの特徴や魅力を発信することがPRの役割です。

PRの仕事内容

PRの仕事内容は、自社の商品やサービスの特徴や魅力を社会全体(個人・集団・社会)を含む広範な対象に発信する活動です。具体的な仕事内容は以下のとおりです。

  • オウンドメディアやSNSでの情報発信
  • プレスリリースの作成・配信
  • 記者会見やプレスセミナーの企画・実施
  • キャンペーン企画の実施
  • 展示会などイベントへの出展

まとめ

まとめ

広報とPRの違いについて説明してきましたが、結論としては、本来「広報」=「PR」であるものの、日本企業では実務上「広報」のうちの「サービス広報」=「PR」として捉えられることが多いといえます。

広報担当者として、広報とPRのもつ意味や使われ方の違いを認識したうえで、企業の目的を達成できるよう効果的な広報活動・PR活動を推進してください。