スクリーンショットの違法性、どの範囲から違法となるか?
2021年1月1日より改正された著作権法が施行され、その内容にスクショでの保存も含まれています。
どのようなダウンロードが違法か、どのような刑罰があるか。
目次
著作権法の改正目的とは~!
著作権法は、著作物の公正な利用、著作者・著作権の保護を図るための法律です。
しかし、漫画や雑誌等の海賊版による被害が拡大しており、その権利や利益が守られていませんでした。権利者団体による調査・推計によると、一部の海賊版サイトだけでも3,000億円分もの出版物が無断で読まれたり、ダウンロードされたり、漫画家や出版社の売上が20%も減ったとされています。
国内最大のリーチサイト(侵害コンテンツのリンクを集約したWebサイト)では、摘発までの1年間だけでも700億円以上の被害が生じてしまいました。
これだけ目立ったWebサイトであれば個別に対応して閉鎖させることもできますが、世の中には数多くの海賊版サイトが存在しており、漫画以外にもゲーム、新聞、専門書、写真集等、さまざまな分野で被害が発生しています。
そのことによって法整備で、ルールから変える必要があり、改正著作権法が2020年6月に成立し、2021年1月1日に施行されました(一部は2020年10月1日に施行)。
著作権法及びプログラムの著作物に係る登録の特例に関する法律の一部を改正する法律です。
下の3点について、著作権法が改正された。
違法ダウンロードになるスクリーンショット
違法にアップロードとされた事を「知りながら」スクリーンショットでその画像を保存してしまった場合
この法律では、スクリーンショットで違法なコンテンツを保存することも規制の対象になっています。
公式から、許可を得ずに画像を掲載している海賊版サイト・匿名掲示板・個人ブログ等でスクリーンショットしたものは違法になります。
上記の行為を行った場合、著作権者から民事訴訟で損害賠償請求される可能性があります。
また、有償で提供されているコンテンツ(雑誌や漫画等)を反復・継続してスクリーンショットをしていると刑事罰(2年以下の懲役もしくは200万円以下の罰金、又はその二つの刑)が科される可能性もあります。(改正著作権法119条3項2号)
ただ、一概に「違法アップロードされた画像をスクリーンショットした場合」とは言え、一定の例外要件に該当すれば違法になりません。
違法なスクリーンショットが適法になる例外
一定の例外要件に該当すれば違法なスクリーンショットではなくなることがあります。
その例外は、主に以下の4つの項目があります(改正著作権法、30条1項4号)。
- 分量(軽微なものの一種)
- 画質(軽微なものの一種)
- 二次創作
- 著作権者の利益を不当に害しないと認められる特別な事情がある場合
分量
軽微なもの程度の分量で有れば、違法なスクリーンショットでも違法にはなりません。
軽微なもの具体的な量は、著作物全体の量とスクリーンショットの分量を比較して考えます。
例として
- 数10ページで構成される漫画の1コマ~数コマ
- 長文で構成される文章や新聞記事等の1行~数行
- 数100ページで構成される小説の1ページ~数ページ
画質
画質が低く、それ自体では鑑賞に堪えないような粗い画像であった場合例えば、YouTube動画一覧で、表示されている小さなサムネイルをスクリーンショットした場合は、鮮明に見えるわけではないので(軽微なものの一種)と判断される。
二次創作
原則的に、原作者から許可を得ずに作られた二次創作をインターネット上にアップロードすることは著作権侵害で違法です。
しかし、現状は数多くの二次創作が行われており、許可を出さずとも黙認という形で許容している習慣があることから、二次創作については、違法ダウンロードの対象から除外されています。
ただ、第三者が二次創作者の許可を得ずに違法アップロードを行った場合は、そのスクリーンショットも規制の対象になります。
著作権者の利益を不当に害しないと認められる特別な事情がある場合
例えば、犯罪集団が作成して郵送してきた葉書が被害者のSNSに無断掲載されている場合に、それを自分や家族を守る目的でスクリーンショットすることなどは上記に該当し、適法になります。
今までの3つの要件に該当せず、違法ダウンロードをおこなっていたとしてもこのような特別な事情があることを証明できれば、違法になりません。
「まとめ」刑罰の中身は?
刑事責任
著作権を侵害した者は原則として10年以下の懲役又は1,000万円以下の罰金に処するとされています(著作権法第119条)。
法人については、その業務に関して侵害行為を行った場合、その実行行為者の処罰に加え、業務主体たる法人にも罰金刑(原則として3億円以下の罰金)が科されるとする、いわゆる両罰規定があります(著作権法第124条)。
発信者を告訴することで刑事責任の追及が可能な場合もある。
民事責任
通常の損害賠償請求訴訟では、賠償を請求する側で損害額を立証しなければならない、しかし、著作権法には損害額についての算定規定が設けられており(著作権法第114条)、著作権者からの損害賠償請求を容易にしています。
たとえば、ご自身の著作権が侵害され、それによって著作権を侵害する者が利益を受けている場合には、その利益の額が損害の額と推定されますので、これを根拠に損害額を算定することができます(著作権法114条2項)。
また、本来はライセンス料を支払わなければ著作物を使えないにもかかわらず、他人が勝手にご自身の著作物をスクリーンショットに写り込ませて、SNSに投稿しているような場合、ライセンス料相当額を損害額として請求することができます(著作権法114条3項)
「まとめ」スクリーンショットをネットにアップロードする時は引用する。
著作物をスクリーンショットして、むやみやたらにネットにアップロードするのは止めたほうが良いと思います。
著作権法改正で、サイトからのダウンロードや、スクリーンショット自体も今まで以上に気をつけましょう。
もしスクリーンショットをネットにアップロードする場合は、著作権者の許可を得たものか、引用するようにしましょう。
引用における注意事項
引用を行う場合、以下の事項に注意して下さい。
- 他人の著作物を引用する必然性があること。
- かぎかっこをつける等、自分の著作物と引用部分とが区別されていること
- 自分の著作物と引用する著作物との主従関係が明確であること
- 出所の明示がなされていること。(第48条)
(参照:最判昭和55年3月28日「パロディー事件」)
著作権についての理解を深めてコンテンツを正しく利用しましょう。
改正著作権法が施行された事を考えると、今まで私たちユーザーは著作権を侵害する行為を当たり前にやってきたとも解釈できます。これからは、著作権への理解を深めて、正しくコンテンツを利用していく必要があるでしょう。
ネットの私生活が制限されるのは厳しいですが、新たな法改正があれば、その内容に数年かけて慣れていくべきなのです。
相手の権利、自分の権利を守って自由に使っていきましょう。