adobeの生成AI『Adobe Firefly』がリリースされてから1年経ちました。生成AIが最近話題になっていますが、いまだによく分からない人も多いのではないでしょうか?著者もそのひとりでした。
これを読めば生成AIとそれにまつわる著作権問題の概要が分かり、『Adobe Firefly』の正しい使い方が分かります。
目次
生成AIとは
生成AIの根本は「ディープラーニング(深層学習)」という技術です。私たちも本やテレビ、インターネットなどのあらゆる情報から知識を得ますよね?それと同じです。
「ディープラーニング(深層学習)」はまず大量のデータ(資料)を取り込み、そこからある規則的なパターンを割り出します。それを繰り返すことにより新しいコンテンツを生み出すことができるようになった画期的な技術です。初期のAIは前もって元になるデータが必要でしたが、それなしでもコンテンツを自ら生み出せるようになりました。これが「生成AI」と呼ばれるものです。
生成AIの正しい使い方
生成AIと言えば著作権問題と切っては切れない関係にあります。その理由は先述した生成AIのシステムに懸念点があるからです。
生成AIが持つパターンは大量のデータが元になっていることから、どこかで似たり寄ったりの創作物になることは避けられません。またパターンの元となっているデータそのものに著作権侵害の可能性がないかまで考慮する必要があります。
著作権とは
そもそも著作権とはどういうものか答えられますか?著作権とは一言でいえば、「日本文化発展のために著作物を生み出す著作者に報いるもの」と言い換えることができます。
著作物を利用するには使用料や許可が必要です。それらを著作者に還元することで、そこから著作者はまた新しい著作物を生み出せるという文化発展のための循環ができているのです。
著作権侵害にあたるもの
著作権侵害の問題を考えるにあたり、2つのキーワードがあります。「依拠性」と「類似性」です。創作の流れと同じで、「依拠性」→「類似性」の順番で考えるのが分かりやすいでしょう。
「依拠性」とは創作物を生み出す過程で既存の作品を参考にしたかというのが論点になります。既存の作品とたまたま似てしまっても、そこに意図がない場合は「依拠性」がないと判断されます。
「類似性」は最終的な作品が既存の作品と似ているかが論点となります。構想段階のアイデアなどの部分で共通点があっても「類似性」の問題にはならないのです。
adobeの生成AI『Adobe Firefly』とは
生成AIと著作権について理解したところで、adobeの生成AI『Adobe Firefly』について見ていきましょう。
『Adobe Firefly』はAdobe社が2023年3月にリリースした画像生成AIです。日本語を含む100以上の言語に対応しています。これまでのadobeのPhotoshopやillustratorに加え、よりクリエイターをサポートできるような目的で生まれたのが『Adobe Firefly』です。
Adobe Fireflyでできること
以下の4つが代表的なものです。
- Text to image(テキストで画像作成)
- Generative fill(生成塗りつぶし)
- Text effects(テキスト効果)
- Generative recolor(生成再配色)
Text to image(テキストで画像作成)
AIへの指示と言えるプロンプトに文章を入れることで、文章に合わせた画像が生成されます。
例えば「夜の都会でネオンライトに照らされる女性」と入力すると見出し下のような画像が現れます。
1回の入力により4つの画像が生成されます。
Generative fill(生成塗りつぶし)
ブラシを使って画像の一部を変更することができる機能です。
イメージの入れ替えや追加、削除することが可能です。
人物の髪形や小物の細かな変更、背景の変更、2つの画像を組み合わせるなどすることができます。
Text effects(テキスト効果)
文字にエフェクトをかけることができます。
文字とは別に、かけたいエフェクトのテキスト入力をすることにより、個性的な文字が生成されます。
例えばFlowerという文字でイメージ通りの「Flower」のエフェクトをかけるのも、あえて「Water」と別のエフェクトをかけてギャップを出すことも可能です。
Generative recolor(生成再配色)
すでに完成した画像に対し、別の配色を施した様々なパターンを出すことができる機能です。
イメージに合わせた配色を自動で行い、細かいカラーバリエーションも後から変更することが可能です。
Adobe Fireflyの料金
『Adobe Firefly』には無料プランとプレミアムプランがあります。
無料プラン | プレミアムプラン | |
---|---|---|
月額料金 | 無料 | 660円(税込) |
年間プラン | 無料 | 6,780円(税込) |
生成クレジット | 25回/月 | 100回/月 |
Adobe Fireflyの著作権対応
ここまで『Adobe Firefly』の概要を見てきましたが、一番気になるのは安全かつ信頼できる生成AIかということですよね。『Adobe Firefly』には生成段階で著作権侵害を防止するためのシステムが備えられています。
下記の3つで対策を打っています。
- 学習素材
- 規制ワード
- 責任
Adobe Fireflyの学習素材
adobeの生成AIが元にしているデータは下記の3つです。
- Abobe stock
- パブリックドメイン
- オープンライセンスのコンテンツ
Abobe stock
Abobe stockとはアドビ社自身が管理しているロイヤリティフリーの素材提供サービスです。高品質で写真・イラスト・3D素材など幅広い素材が2億点以上用意されています。
これらは全て商用利用可能で、著作権の問題をクリアしています。
パブリックドメイン
著作者が亡くなってから70年経過し、著作権が消滅した創作物のことです。著作者自身が著作権を放棄した創作物もパブリックドメインに含まれます。
オープンライセンスのコンテンツ
自由に利用・加工・再頒布することが許可されているコンテンツです。アドビ社はこれらを合法的に利用できます。したがってAdobe Fireflyで生成された創作物も商用利用が可能となっています。
Adobe Fireflyの規制ワード
プロンプトでは著作権を含むワードや反社会的なワードが自動的に排除されるようになっています。例えばキャラクター名を入れると、「ユーザーガイドラインを満たしていない可能性があるため削除されました。」という文章が出ます。自動的になかったことにしてくれるのはありがたいですね。これと同じくポルノや差別、暴力を連想する言葉(銃や犯罪など)も削除されます。
Adobe Fireflyの責任
『Adobe Firefly』で生成された画像はアドビ社から知的財産として補償されます。これは何かあった時はアドビ社が責任を負うということです。補償される安心と同時に生成画像はアドビ社も自由に使うことができるというのは、どこかで覚えておきたいですね。
他の生成AIとの比較
『Adobe Firefly』以外の有名な生成AIは「Stable Diffusion」や「Midjourney」、「DALL・E」などが挙げられます。これらが生成する画像は高クオリティではありますが、肝心のデータの学習元が分かりません。著作権侵害している画像を元にしている可能性もあるのです。損害賠償を要求されても自己責任となってしまいます。このような他の生成AIと比較しても、『Adobe Firefly』は一番安全な生成AIと言えます。
まとめ
- 生成AIは「ディープラーニング(深層学習)」を経て、自ら新しいコンテンツを生み出せるようになった技術です。
- 著作権は「依拠性」と「類似性」が認められる場合が著作権侵害となります。
- 『Adobe Firefly』はシンプルなテキスト指示で様々な角度からクリエイターをサポートする生成AIです。
- 『Adobe Firefly』は学習素材、規制ワード、責任の3つの面から著作権に配慮しています。
- 『Adobe Firefly』は他の生成AIと比較しても信頼できる生成AIです。
生成AIと著作権を理解したうえで『Adobe Firefly』を使って創作活動を楽しみましょう!