アドネットワーク広告とDSPやアフィリエイトの違いとは?

アドネットワーク広告とDSPやアフィリエイトの違いとは?

アドネットワーク広告とDSPやアフィリエイトの違いとは?

 アドネットワーク広告とは、様々なWeb媒体の広告枠にまとめて配信する仕組みを使った広告のことを指します。配信効果を分析しながら運用する運用型広告に含まれ、各媒体のユーザーに最適化した情報を届けることができます。そしてアドネットワーク広告を含め、インターネット広告を取り巻く環境は、Cookie規制に代表されるように日々変わっています。

 ここでは、アドネットワーク広告の仕組みやcookie規制の影響、混同されがちなDSPやアフィリエイトとの違いなどについて図解を含めて解説します。

インターネット広告の3つの種類とアドネットワーク広告

 
 アドネットワーク広告の説明に入る前に、インターネット広告の全体像をお伝えします。ここを抑えることで、アドネットワーク広告のメリットやCookie規制の影響を受ける理由(後述)、今後どのように顧客獲得をしていけば良いかのヒントが見えてきます。
 
 
 インターネット広告は、今や日本の総広告費の5割に迫り、SNSや動画・音声配信など様々なサービスの拡充に伴い広告枠は広がっています。
 
 また、取引手法別に予約型広告、運用型広告、成果型広告の3つがあり、アドネットワーク広告は、運用型広告に含まれます。運用型広告は、この3つの中で約9割を占める最も主流なものであり、広告主(広告代理店)が配信効果を分析しながら配信内容や予算を変え、ユーザーに最適な情報を届けることができることが大きな魅力です。

 以下に3つの特徴をまとめました。

予約型広告運用型広告成果型広告
主な内容記載場所や期間が決まっており、広告内容・費用を確定して配信する効果分析しながら配信内容を変え、最適な広告枠にリアルタイムで配信。費用は成果に応じる購入や申込みなど成果発生時に費用を払う。広告代理店やASPに広告運用を任せることが殆ど
代表例・マイページジャック広告(トップページ全面を占有など)
・YouTubeのマストヘッド広告
・タイアップ記事/広告
・バナー広告
・検索連動型広告(リスティング広告)
・リターゲティング広告
・YouTubeやTikTokなどの動画広告
・Instagram、TwitterなどのSNS広告
・アフィリエイト広告
・検索連動型広告(クリック課金型)
・成果報酬型SNS広告
・成果報酬型メール広告
主な目的幅広い層への認知拡大、ブランディングよりターゲットを絞った認知拡大、ブランディング、顧客獲得認知拡大、顧客獲得
費用相場1回あたり数十万~数百万円1クリック・視聴あたり数円~数千円
1000回表示あたり数百円
1成果あたり数千円~数万円
インターネット広告費
に占める割合※
9.9%
(2022年比100.1%)
87.4%
(2022年比110.9%)
2.7%
(2022年比75.8%)

※国内電通グループ(CCI/電通/電通デジタル/セプテーニ)2024年3月発表「2023年 日本の広告費 インターネット広告媒体費 詳細分析」参照

 このように運用型広告は、コスト面でも広告配信の敷居が低く、よりターゲットを絞ったアプローチで効率的なブランディングや顧客獲得を叶えることができます。そのため企業の運用型広告への費用投入は益々増えており、この運用を効率的に行うことが必須と言えます。
 
 とは言っても、どのWeb媒体にどのような広告を出せば良いのか?と悩みますよね。それを解決できるのが、アドネットワーク広告です。

アドネットワーク広告とは?概要と仕組みを解説

アドネットワーク広告とは?概要と仕組みを解説 
 アドネットワーク(Ad Network)は、複数のWeb媒体(WebサイトやSNS、動画サービス等)をまとめた広告配信ネットワークを通じて、各媒体に広告を配信する仕組みのことです。つまり、これを利用すれば、広告主は様々な媒体を閲覧するユーザー(ターゲット層)に一気に情報を届けることができ、効果分析や予算管理も一括でできるのです。

 アドネットワークの運用方法は、シンプルです。広告主は、自社のビジネスにマッチするアドネットワーク事業者を選び、そのプラットフォーム上で広告出稿と入札をすれば、関連性の高い媒体に自動で広告配信される仕組みになっています。

 
 配信先が自動で決まることに不安を感じる方もいらっしゃるかもしれません。ですが、各アドネットワークには、リーチしたいユーザー属性を指定できるターゲティング機能があるので安心です。この設定を行えば、プラットフォーム側の機械学習が広告主の設定と媒体特性、ユーザー行動・興味関心を分析し、最適なタイミングで、最適な媒体に広告を配信します(ターゲット配信)。

 もちろん、幅広い層への認知拡大を目指す場合などには、あえてターゲティング機能を設定せず、広告配信を行うこともできます(ノンターゲット配信)。

アドネットワーク広告のメリット、デメリット

アドネットワークのメリット、デメリットを以下にまとめてみました。

メリット

  • 複数のWeb媒体に一気に広告配信できる
  • ターゲティング機能などを利用し、効率的な広告配信ができる
  • 作業工数やコストを削減できる
  • 効果分析の信頼性が高い

 
 広告主(広告代理店)は、アドネットワークを決め、広告(静止画、動画など)を作成してターゲットデータを登録(かつ入札)するだけで、様々な媒体の狙ったユーザーに広告を配信できます。Web媒体の選定や各媒体での個別対応もすることなく、広告枠もパッケージされているため、作業工数もコストも抑えることができます。
 
 また、課金形態も統一されているので支払いもしやすく、効果分析も各媒体ではなくアドネットワークが行うため、より客観的で信頼性が高いデータが手に入ります。

デメリット

  • 意図しない媒体に広告配信される可能性がある
  • ブランドイメージが悪くなる可能性がある
  • 複数のアドネットワークを利用すると、配信先が重なる可能性がある

 
 アドネットワークでは、基本的にテーマやジャンルは選択できても、配信先の媒体を選べません。場合によっては、特定の政治・宗教団体や、騒動が起きた芸能人などが特集されているような広告枠に配信される可能性もあります。
 
 
 また、複数のアドネットワークを利用する場合、1つの媒体が複数のアドネットワークに加盟していることもあるため注意が必要です。登録したターゲット層が同じであると、1つのWebページに複数の広告が配信されてしまい、ユーザーに「しつこい」「広告だらけ」と悪い印象を与えてしまう可能性もあります。

 こうしたデメリットに対しては、「配信先を確認できる」「配信したくない広告枠を設定できる」といった機能を搭載しているアドネットワークもあるため、契約前に確認しておくと良いでしょう。

代表的なアドネットワーク

 

 アドネットワークは15年以上前に登場しており、ガラケーからスマートフォン、パソコン、アプリ、SNSなど様々なデバイス・サービスの広がりに合わせて、各社リニューアルを行ってきています。ここでは、代表的な8社を一覧で紹介します。
 

アドネットワーク特徴主な配信先
Googleディスプレイ ネットワーク(GDN)
運営:Google
最も有名で、Googleと連携する200万以上のWebサイトやアプリに広告配信できる。ユーザーリーチ率はインターネットユーザーの90%以上。ターゲティング等の機能も充実しており、まずは押さえておきたい。YouTube、Gmail、教えてgoo、食べログ、pixiv、BIGLOBE、livedoor、Ameba など
Yahoo!広告 ディスプレイ広告(運用型)(YDA)
運営:ヤフー
GDNと同じくらい有名。Yahoo! JAPAN系列のコンテンツなどに配信できる。ユーザーリーチ率はスマホ83%・PC64%。配信サイトをシステムと人の目で確認しているため、ブランド毀損リスクが低い。Yahoo!ニュース、Yahoo!天気、Yahoo!オークション、LINE、クックパッド、朝日新聞デジタル、NAVER、Ameba など
楽天広告
運営:楽天グループ
楽天グループ展開の70以上のサービスと提携サイトに広告配信できる。1億人以上の楽天会員データから、精度の高いターゲティングが行える。ECサイト運営や楽天市場に出店している企業は特におすすめ。楽天市場、Yahoo!、SmartNews、その他提携SSP、Facebook、LINE など
LINE広告ネットワーク
運営:LINEヤフー
国内のLINE利用者9600万人に広告配信できる。86%が毎日利用しており、15-29歳の世代では1日で90%にリーチ可能。TikTokなど6000以上の外部アプリにも配信でき、特に若年層にリーチしたいなら押さえておきたい。LINEニュース、LINEマンガ、DELISH KITCHEN、AbemaTV、TikTok、あすけん、ジモティー など
Meta 広告 Audience Network
運営:Meta
国内アクティブユーザー数2600万人のFacebookや、同3300万人のInstagram、提携サイトなどに配信できる。ターゲティングの精度の高さが強みで、性別・年齢・地域、関心のあることまで細かくターゲティングできる。Facebook、Instagram、Messenger、C CHANNEL、グノシー、東洋経済オンライン、Retty、食べログ、ジョルダン乗換案内 など
i-mobile Ad Network
運営:アイモバイル
2007年のガラケー版リリース以降、マルチデバイス対応の国内最大級の運用型アドネットワーク。ストアランキング上位のアプリや大手Webサイトなど国内最大級の配信在庫を保有し、スマホアプリへの動画広告プラットフォームmaioと統合し動画在庫も国内最大。大手Webサイト、Web媒体、アプリ(SNS、ゲーム、マンガ、動画配信アプリ、マッチングアプリ) など
UNIVERSE Ads
(旧MicroAd BLADE)
運営:マイクロアド
マイクロアド社アドネットワークUNIVERSE Adsと統合したDSP広告配信プラットフォーム。国内最大規模の自社オーディエンスデータに加え、210社以上のデータプロバイダーと接続する「UNIVERSE」と連携し、各業界・業種に最適なターゲティング配信ができる。BtoB広告は特におすすめ。BtoB業界特化・シラレル、飲料食品業界特化・Pantry、エンタメ業界特化・Circus、医療製薬業界特化・IASO、自動車業界特化・IGNITION、美容業界特化・Vesta の配信先
ReeMo by GMO
(旧AkaNe by GMO)
運営:GMOプレイアド
GMOアドネットワークAkaNeと統合したDSP広告配信プラットフォーム。国内主要メディアを中心に月間最大約5200万ユニークユーザーに配信可能。Cookieレス対応のコンテキストターゲティング(サイト内容やユーザー行動に基づく配信)に特化している。文集オンライン、現代ビジネス、マイナビニュース、東J-CASTニュース、スポWEB、スポーツ報知、ananweb、モデルプレス など

 アドネットワークはこの数年で、上記の表のUNIVERSE Ads、ReeMo by GMOのようにDSPと統合したり、例えばスマホゲーム媒体に強かったnend(運営:Gunosy、2010年7月~2024年3月)、ニュースアプリ系媒体に強かったGunosy Network Ads(運営:Gunosy、2014年6月~2024年6月)のようにサービス終了となるところも増えてきています。
 この要因としては、代表アドネットワークへの集中や、Cookie規制によるものが考えられます。

Cookie規制はアドネットワークにどう影響する?

Cookie規制はアドネットワークにどう影響する? 

 近年、Cookieの利用を制限するcookieレスの動きが盛んになっています。これは日本だけでなく、世界的に個人情報保護が強化されているためです。

 アドネットワークのターゲティング機能は、Cookieを利用してきました。Cookieとは、ユーザーがWebサイトを閲覧した際、スマホやPCに保存されるテキストファイルのことです。このファイルにはIDが記載され、行動履歴や会員情報などが保存されます。

 
 Cookieには、ファーストパーティCookieサードパーティCookieの2種類あり、いま規制を受けているのが主にサードパーティCookieで、アドネットワークに関係するのもこちらです。

 ファーストパーティCookieは、閲覧したWebサイトから発行されるもので、発行元のWebサイトのみで有効です。訪問ユーザーを識別するために利用されるので、ユーザーは再ログインが不要だったり、閲覧履歴やカートの中身をそのままにしておけたりします。
 
 一方、サードパーティCookieは、閲覧したWebサイト以外から発行されるもので、そのWebサイトに広告を掲載している事業者などから発行されます。複数のWebサイトにアクセスしたユーザーの行動を追跡し、その情報を基に新たな広告配信などを行います。何か商品を検索して公式HP等で閲覧した後、別のWebサイトを閲覧中にその商品の広告が配信されることがあると思います。このような広告は、リターゲティング広告と呼ばれ、運用型広告およびアドネットワーク広告でよく使われているものです。
近年、Cookieの利用を制限するcookieレスの動きが盛んになっています。

 
 cookie規制がされると、以下のようなアドネットワークのターゲティング機能が制限されてしまいます。

  • ユーザーの検索・閲覧履歴のある商品・サービスの広告配信(リターゲティング)
  • ユーザーの検索・閲覧履歴から予測した関連商品・サービスの広告配信(ビヘイビアターゲティング)
  • ユーザーの年齢・性別・地域などを予測した広告配信(デモグラフィックターゲティング)

 また、広告を見たユーザーがその後どのような行動をしたか確認する<b>コンバージョン計測の精度が低下し、広告効果の分析や判断も難しくなります。

 
 このような中、アドネットワークではcookie規制への対応も進んでいます。例えばGoogleディスプレイ ネットワークでは、Googleが持つ個人情報と広告主が持つユーザー情報が合致するユーザーに対して広告配信できるカスタマーマッチの仕組みを導入したり、Yahoo!広告ディスプレイ広告では、広告効果測定を補完するコンバージョンAPIとの連携を図ったりしています。ReeMo by GMOのように、cookieレスに対応した独自のコンテキストターゲティングに特化したサービスへの転換なども進んでいます。

 
 なお、サードパーティーcookie規制の具体的な動きとしては、日本のブラウザ使用率2位のSafariは既に全面廃止しており、1位のChromeでは2025年初めに段階的に廃止することを公表しています。これから益々インターネット広告への影響が本格化するため、アドネットワークを選ぶ際にはcookie規制への対応についてチェックしておくことが必要です。

アドネットワークと混同されがちなDSPとは?SSPも合わせて解説

 アドネットワークについて解説してきましたが、混同されがちなDSPとの違いについても触れておきます。
 
 DSP(Demand-Side Platform)とは、広告効果を高めるための自動最適化ツールのことです。広告主が予算やターゲット情報、目標CPA、広告内容などを登録し、それに従い、インターネット上の最適な広告枠を自動的に買い付けて配信を行う仕組みです。

アドネットワークと混同されがちなDSPとは?SSPも合わせて解説

 つまり、アドネットワークは複数の媒体をまとめた広告ネットワークであり、 対するDSPは広告枠及び各アドネットワークに配信するための自動化ツールという違いがあります。アドネットワークとDSPは連携していたり、組み合わさったサービスもあるため、混同しやすくなっています。

 
 また、DSPと一緒に覚えたい用語にSSPがあります。

 SSP(Supply-Side-Platform)とは、Web媒体側の広告収益を最大化するためのプラットフォームで、DSP(及び一部アドネットワーク)と連動しています。
 
 Web媒体の広告枠には、複数のDSPから買い付けリクエスト(入札単価提示)が入ります。その際にSSPが、ユーザーに最適かつ最も単価の高い広告を自動で配信する仕組みになっています。このやりとりは僅か0.1秒以内にリアルタイムで行われ続けています。

アドネットワークとアフィリエイトとの違いは?

 補足として、アフィリエイト広告との違いについても少し触れておきたいと思います。

 アフィリエイト広告は、成果型広告の一つです。多くの場合、ASP(Affiliate Service Provider)と呼ばれる事業者が広告主とアフィリエイターを仲介しています。ASPが企業の広告案件を取りまとめ、アフィリエイターが自身の媒体(ブログなど)で紹介しやすい広告を選んで配信するという仕組みになっています。

 つまり、アドネットワーク広告は、Web媒体をまとめたサービスを利用したものであるのに対し、アフィリエイト広告は、広告案件をまとめたサービスを利用したものという違いがあります。

 また、費用発生のタイミングも異なります。アドネットワーク広告では、広告がクリックされるたびに課金されるクリック課金方式や、1000回表示毎に課金されるインプレッション課金方式が主に採用されています(DSPも同様)。

 一方、アフィリエイト広告では、広告主が設定した条件(購入や申込み、サイト訪問など)を満たしたときに広告費が発生する仕組みとなっています。1案件あたりの広告費用は高い傾向にありますが、条件を満たすまでは費用発生せず、広告を配信できるという利点もあります。

まとめ

まとめ

 ここまでの内容を簡単にまとめると、以下のようになります。

  • アドネットワーク広告は、運用型広告の一つである
  • アドネットワーク広告は、複数のWeb媒体に一気に配信でき、広告内容・費用・効果分析が一括で管理できて効率的
  • アドネットワークはcookie規制の影響を受けるが、各事業者の対応も進んでいる
  • アドネットワークは広告ネットワークであるのに対し、DSPは広告配信の自動ツールである
  • アフィリエイトは成果型広告の一つで、広告案件をまとめたサービスである

 アドネットワーク広告の導入にあたっては、自社ビジネスの特徴と相性の良いアドネットワークを選び、cookie規制への対応などをチェックすることが重要です。

 日本でのcookie規制の影響はまだ限定的ではありますが、今後より本格化することが予測されます。実際、広告担当者などからコンバージョン計測の精度低下で効果分析しにくくなっているという声も出てきているほか、予約型広告への回帰の動きも出てきているようです。

 今後は、アドネットワーク(運用型広告)をうまく活用しつつ、予約型広告との併用や、インターネット広告以外のマーケティング活動も改めて検討していく必要があります。例えば、自社サイトのSEO強化やSNS運用によるフォロワー拡大、イベントへの出店やチラシ(QRコード利用)の配布といったオフラインでのマーケティング活動なども組み合わせながら、自社ビジネスの認知・理解を促し、しっかりとリピーター化を進めていくことが大切になっているのではないでしょうか。