本記事では、生成AIのビジネスでの基本的な活用方法と大手企業の実例を分かりやすくご紹介します。
こんな方におすすめ
- 生成AIのビジネス活用を検討している
- 生成AIのビジネス活用方法やポイントを抑えておきたい
- 大手企業の生成AI活用事例を知りたい
生成AIとは?
生成AIは人工知能(AI)の一種で、機械学習の技術を駆使して新たなデータ(テキスト、画像、音声、ビデオ等)を生成する技術です。
これまでオリジナルのアイデアやコンテンツの創造は人間だけが可能とされていましたが、近年の急速な技術進歩により、簡単な利用方法で、人間が作成したものと同等、あるいはそれ以上の質のコンテンツを自動で生成できるようになりました。
この独自の能力により、既存のビジネスや業務のあり方を変えていく存在として、大きな注目を集めています。
生成AIのビジネス活用方法8つ
企業が生成AIを導入した際の活用方法を紹介していきます。
- 予測分析
- マーケティング広告
- 企画立案
- 資料作成
- 社内での活用
- 顧客対応
- 会議への活用
- リスク管理
予測分析
生成AIを活用することで、Webサイトでのリサーチや分析をより効率的で正確な予測にすることができます。
また、大規模なデータから意味のある規則性を見つけ出し、未来のトレンドや傾向を予測することも可能です。
これにより、人間の手作業に比べて迅速で客観的な予測が行え、戦略立案や意思決定がより洗練されます。
マーケティング広告
生成AIは魅力的な広告コピーや画像・ビデオの自動生成、ユーザーの好みや興味に合わせたコンテンツの提供が可能です。
さらにデータ解析を行って、広告を特定のターゲットに向けて最適化したり、広告の効果を事前に予測したりできます。また、顧客のフィードバックを分析して、リアルタイムで広告戦略を調整することも可能です。
これにより、効果的な広告を通じて顧客との関係を深め、自社のファンが増えることでしょう。
企画立案
生成AIは市場や顧客のデータを分析し、新しいニーズやトレンドを見つけ、それに基づいた新しいアイデアの提案が可能です。
競合分析や情報の整理も行い、クリエイティブな発想を促進します。これにより、革新的なアイデアを生み出し、企業の競争力を高めることができます。
また、自分の企画に対するフィードバックを受け、磨きをかけるという使い方もあります。
資料作成
生成AIは自動的にメール、提案書、マニュアルなどの文章を生成し、必要な情報を整理して提供してくれます。
文章のクオリティを上げるための編集や校正もできるので高品質な文書を作成することができ、社内用の文章など定型的な文書であれば、一度設定すると自動で作成することが可能です。
一貫性のある品質を保ちながら、より早く、より多くの文書を提供できるので、時間と労力を大幅に削減できます。
社内での活用
独自のデータを学習させた生成AIを使ったチャットボットの導入により、各社員に最適な社内の専門知識をリアルタイムで共有することができます。
例えば、人事手続きや休暇申請方法の質問に対して、社内規定を参照し迅速に回答を提供してくれます。これにより、従業員が必要な情報を即座に得られ、業務の効率化に大きく貢献します。
顧客対応
生成AIを活用したチャットボットや自動応答の導入により、顧客からの問い合わせ対応の一部を自動化できるようになります。
これにより、24時間対応や迅速な問題解決が可能となり、顧客満足度が向上し、同時にオペレーターなど業務負担も大幅に軽減されます。
会議への活用
生成AIを会議で活用する方法は、議事録の作成や要約の自動化です。
会議の音声をテキストに変換し、重要なポイントやアクションアイテムを抽出して報告書を生成できます。
参加者は重要なポイントをすぐに確認できるようになり、会議後の業務効率を大幅に向上できます。
リスク管理
生成AIをリスク管理に活用することで、大量のデータの検証と潜在的リスクの判断が可能です。
AIは過去のデータからパターンを学習し、潜在的なリスクを識別します。また、リアルタイムのデータを監視し、異常を検出して早期警告を発することも可能です。
これにより、リスクの早期発見や適切な対応が可能となり、組織の安定性と持続可能性が向上します。
【活用方法別】大手企業の生成AI活用事例15選
ここからはただいま紹介した活用方法別に、実際の活用事例を紹介します。
活用方法 | 企業名 |
---|---|
予測分析 | 楽天 |
リクルート | |
マーケティング広告 | サイバーエージェント |
コカ・コーラ | |
企画立案 | セブンイレブン |
パナソニック | |
資料作成 | 三菱UFJ銀行 |
横浜銀行 | |
社内での活用 | 日立製作所 |
KDDI | |
顧客対応 | ベルシステム24 |
ヤフー | |
会議への活用 | 日清食品 |
リスク管理 | 千葉銀行 |
中部電力 |
【予測分析】楽天
楽天は、データ分析で的確な商品提案やキャンペーン・セールの効果予測のため、生成AIの活用を始めました。
この取り組みにより、ユーザーの購買履歴や閲覧履歴、クリック率などのデータを分析し、個々のユーザーに最適な商品を推薦することができます。
さらに、季節やイベントに応じたキャンペーンやセールの効果を予測し、ターゲティングの精度を高めています。
生成AI導入によりユーザーの利便性が向上し、楽天の売上増に繋がっているとのことです。
【予測分析】リクルート
リクルートは、求人マッチングや企業の採用予測において、効率的で正確なサービスを提供するために生成AIを活用しています。
個々の求職者と企業のニーズを分析することで双方により最適な提案を行うことができるようになりました。
この取り組みにより、リクルートはより効率的なサービス提供やビジネス運営を実現し、顧客満足度の向上や競争力の強化を図っています。
【マーケティング広告】サイバーエージェント
サイバーエージェントは、生成AIを活用した広告効果の高い商品画像の自動生成機能「極予測AI」を開発し、今年1月から運用を開始しました。
このツールでは、従来の商品画像の撮影に多くの時間と費用を費やしても広告として使用できる画像の量が見合わないという課題を解決し、機材やセット不要であらゆるシチュエーションの商品画像を自動生成できます。
極予測AIの導入により、大幅な業務効率化とコスト削減を実現しています。
【マーケティング広告】コカ・コーラ
コカ・コーラでは生成AIを活用した「Create Real Magic」を一般公開し、広告アイデアの創出に繋げています。
Create Real Magicはテーマ・シーン・スタイルを選ぶことでクリスマスカードを生成することができます。
利用者が生成したカード画像は、屋外広告やSNSで拡散され、消費者参加型の新たな広告の事例として注目を集めています。
【企画立案】セブンイレブン
セブンイレブンは、商品企画の業務効率化を図るために生成AIの活用を始めました。
店舗の販売データやSNS上での消費者の反応を分析し、新商品に関する文章や画像を迅速に作成することが可能になります。
これにより、商品企画に費やしていた時間が最大90%削減され、トレンドや顧客のニーズに迅速に応える新たな商品を提供できる見込みとのことです。
【企画立案】パナソニック
パナソニックは、電動シェーバー「LAMDASH」シリーズの時期商品に、AIがゼロベースで考案した新構造のモーターの採用を検討しています。
このモーターは、熟練技術者が最適設計をしたモーターと比較して、出力を15%上げることに成功しました。
パナソニックはAI設計の有効性を確認したとして、今後は電動工具や車載用のモーター、さらにはシーリングファンなどにも適用していく方針とのことです。
【資料作成】三菱UFJ銀行
三菱UFJ銀行は、ChatGPTの導入により業務効率を革新し、月22万時間分の労働時間が削減可能という試算を発表しました。
具体的には、社内文書のドラフト作成や稟議書の作成が効率化され、顧客との対話やサービス提供の質の向上に時間を割くことができるようになります。
ウェルスマネジメント業務においても、顧客の詳細なニーズに基づいたアドバイスや提案が可能になるようAIの活用が検討されているとのことです。
【資料作成】横浜銀行
横浜銀行は「行内ChatGPT」の導入で従業員の生産性向上を実現しました。
このシステムを導入することで、文章の要約やメール文案の作成などの業務を自動化し、文書作成にかかる時間が平均37%削減されるという試算です。
自動生成AIの導入により、従業員は新たな業務開発や高度な作業に注力することが可能になります。
【社内での活用】日立製作所
日立製作所は、生成AIの安全・有効な社内外での活用を推進する「Generative AIセンター」を設立しました。
Generative AIセンターとは、専門家がリスク管理をしながら生成AIの活用を推進する専門家組織です。
日立グループ32万人の業務でAI利用を促進し、生産性向上と安全な利用環境を提供していくと共に、顧客にも生成AIの活用を支援するコンサルティングサービスを提供していく予定です。
【社内での活用】KDDI
KDDIでは、社員のAIスキル向上を目的として、「KDDI AI-Chat」という万全なセキュリティを施したChatGPTの社内版を開発しました。
このツールをグループ全体の約1万人の社員が自由に使えるようにし、プログラミングやアンケート調査など様々な業務に活用されています。
さらなる生産性向上のために、全社員向けに生成AIの活用技術を学べる研修にも力を入れています。
【顧客対応】ベルシステム24
全国でコールセンターを運営しているベルシステム24は、「ヒト」と「AI」の力を連携させたハイブリッド型のコールセンターの構築を推進しています。
このコールセンターでは、AIチャットボットが顧客からの問い合わせを受け、簡単な問いにはAIがその場で回答し、難しい問い合わせは人が対応するアプローチをとっています。
新たなアプローチにより、業務の効率化を図り、高品質な顧客対応を実現しています。
【顧客対応】ヤフー
ヤフーはYahoo!知恵袋で、生成AIを導入し「AI回答機能」を2023年11月から提供を開始しました。
AI回答機能は現在457カテゴリの質問に対応し、これまでに75万件以上の質問に回答しています。
今回、新たなAI(Claude 3)を追加することで、ユーザーの回答と2種類の生成AIによる回答がつくようになり、回答のバリエーションがさらに広がり、ユーザーの質問に最適な答えや気づきを提供できるようになります。
【会議への活用】日清食品
日清食品では、独自の生成AI「NISSIN AI-chat」を会議中に活用しています。
短時間で多様なアイデアをAIが提案してくれるおかげで、会議時間を大幅に短縮でき、その分空いた時間は商談の準備など、他の業務に時間を回すことができるようになりました。
【リスク管理】千葉銀行
千葉銀行は、振り込め詐欺などの金融犯罪による被害口座や不正利用口座の検知を高度化するため、AIを活用した不正取引検知サービス「AI Zero Fraud」を導入しました。
従来のルールを用いるシステムは、人間が条件を設定するので理解しやすいですが、複雑な条件を扱うのが難しいです。
一方、AIは取引データを学習して細かい特徴を理解し、高精度で不正取引を検知できるので、金融犯罪の被害防止に役立てられています。
【リスク管理】中部電力
中部電力ではAIを活用して、水力発電所の最適な発電計画を策定するシステムを開発しました。
このシステムでは、水の流入量や天候、水位などのデータを元にして、発電量や売電金額を最大化する計画を自動的に立てることができます。
この取り組みにより、CO2を排出しない水力発電の発電量増加を実現し、エネルギー不足などのリスクに備えることができるようになります。
生成AIをビジネス活用する際のポイント5つ
生成AIをビジネスの場で活用する際に抑えておくべきポイントを5つ紹介します。
- 明確なビジネス目標の設定
- AI技術の限界を認識
- 導入後も継続的にカスタマイズ
- 倫理とプライバシーの考慮
- 社内のAI活用能力の向上
明確なビジネス目標の設定
生成AIを活用する際には、具体的なビジネス目標を設定することが重要です。
例えば、顧客サービスの向上、販売の増加、生産性の向上、コスト削減などです。これらの目標を明確にすることで、どのようなデータを収集し、どのようなモデルを構築し、どのようなアクションを取るかが明確になり、生成AIの活用がより効果的になります。
AI技術の限界を認識
生成AIは全ての業務に対して万能という訳では無く、得意不得意があります。
具体的には、大量のデータの解析やコンテンツ生成は得意だが、高度な専門知識が必要な分野や不確実性が高い状況は苦手です。
そのため、業務の現状や生成AIの特徴を踏まえたうえで、どのように生成AIを活用していくかを選定することが極めて重要となります。
導入後も継続的にカスタマイズ
生成AIは、何度もモデル・学習データ・利用方法等を細かくカスタマイズしなおすことで、より理想とする活用を実現することができます。
例えば、ChatGPTを使用しても自社独自の規定については答えられないので、社内規定などを学習させる必要があります。
また、一度学習させて終りではなく、使用状況を分析しながら足りない情報を追加で学習させることも大切です。
倫理とプライバシーの考慮
企業が生成AIを導入しづらい最大の理由は機密情報漏洩や著作権侵害の懸念が挙げられます。
従業員に特段ルールを設けず、生成AIを活用させた場合、様々な問題が発生する可能性が考えられます。
しかし、データが学習されないようなシステム構築や、使用範囲・機密情報の取り扱いなどの運用ルールを設けることで、リスクを最小化し安全な環境での活用もできるようになります。
社内のAI活用能力の向上
生成AIの特徴は、使い手のAI活用能力次第で成果が変わることです。
そのため、生成AIのポテンシャルを最大限に活用するためには、従業員のAIに対する理解と活用能力を向上させることが不可欠です。
従業員が生成AIの基礎知識や適切な使用方法、リスクを理解するために、社内研修や実践トレーニングを通じて、責任ある利用を促進する必要があります。
まとめ
本記事では、生成AIのビジネス活用方法と大手企業の活用事例、導入時のポイントをご紹介してきました。
生成AIは、多様なデータを効率的に生成する革新的な技術で、新しいアイデアの創出、コスト・時間の削減、顧客満足度の向上といった多くのメリットをもたらします。
実際、数多くの企業が生成Aiを活用し、自社の生産性向上を実現しているため、この記事を読み返して具体的な活用事例を理解しておきましょう。