近年サブスクリプション型のサービスが次々と登場したことをきっかけに「カスタマーサクセス」が重要視され始めています。
実際にカスタマーサクセスを導入した企業や、これから導入したいと検討している企業も多くあると思います。
しかし、カスタマーサクセスに対するノウハウや知見がないことでお悩みではないですか?
本記事では6つのカスタマーサクセス成功事例をBtoB企業とBtoC企業に分けて紹介します。
さらに成功事例から読み解く、カスタマーサクセス成功へのポイントを解説していきます。
「自社にカスタマーサクセス部門を導入すべきか」
「成功するカスタマーサクセス運用方法」
などのお悩みについて、ぜひ参考にしてみてください。
目次
カスタマーサクセスとは?
カスタマーサクセス(Customer Success)とは直訳すると「顧客の成功」となります。
つまり、カスタマーサクセスとは商品を購入している顧客の成功を実現するために、課題解決に向けて能動的に支援することを意味するのです。
顧客のビジネスが成功すれば顧客満足度は向上し、結果として解約率の減少やアップセル、クロスセルが見込めるようになります。
カスタマーサクセスが求められる背景
近年、カスタマーサクセスが注目を集めている背景には、SaaSやサブスクリプションモデルのビジネスが普及したことにあります。
※サブスクリプションモデル…継続課金型サーサービス
NetflixやAmazon Primeなど、BtoC向けのサービスだけではなく、BtoBでもサブスクリプション型のビジネスが増加しました。
従来、製品の販売は「買い切り型」が一般的だったため、受注後や購入後に顧客との関係性が終わることも多くありました。
一方、サブスクリプション型では長期的に継続して利用してもらう必要があり、解約されないよう、顧客との関係性を構築することが事業成長のため必要になります。
そこで注目をされたのが、カスタマーサクセスです。
カスタマーサクセスが、データに基づいて顧客の課題を解決に導いたり、顧客の事業成長に活かすことができるよう支援をすることで、自社製品に満足してもらうことができます。
結果として契約の更新やアップセルに繋がり、企業にとっても長期的な売り上げとなるため、カスタマーサクセスが求められるようになったのです。
また最近では、カスタマーサクセスはサブスクリプションモデルのビジネスだけでなく、製造業などの業界でも注目を集めており、今後さらに注目される可能性があります。
カスタマーサクセスの成功事例 ~6選~
BtoB ~4選~
Slack
Slackはビジネス用のチャットツールです。世界150カ国以上で利用されています。
Slackのカスタマーサクセスでは「Slackを使うことによって、お客さまの業務が改善するかどうか」を重要なポイントとしています。
お客さまがどのようなビジネスの価値を重要視しているか、理解することが重要だとし「聞く力」「理解する力」を持つことが大切だと考えています。
また、カスタマーサクセスの施策として以下のような取り組みを行っています。
- お客様の成功事例を集約し、イベントなどで共有
- 技術的なトレーニングを実施し、正しくツールを使ってもらえる環境の提供
- データ分析やAI活用を通じて、どのようにSlackを活用しているかを測る
- アプリケーションとの連携状況やメッセージ送信状況などを収集し比較
- お客さまと対面式のミーティングを開催し、お客さまの期待と製品との間にギャップはないか確認
- 必要に応じて、製品の改修に関わる情報を開発チームなどへフィードバック
これらの施策が結果として満足度に繋がり、機能の追加や契約の更新に繋がると考えているのです。
参考:https://www.itreview.jp/labo/archives/2466
Sansan
Sansanは法人向けクラウド名刺管理サービスを提供しています。
Sansanのカスタマーサクセスの役割は新規ユーザーへの定着化、その後は活用状況をモニタリングし、お客さまへ適切なフォローを行うことです。
実際にカスタマーサクセス部門で行っている導入時の施策には以下のようなものがあります。
- 導入時に事例を紹介し、活用が定着した後、組織がどのように変わるのかというゴールイメージを伝える
- お客様に「名刺がPCやスマホ上で一覧化され、検索もできて電話もかけられる」という便利さを体験をしていただく
- 部門ごとに1回100人程の規模で説明会を開催
- 1万人規模のお客様に対しては、お客さま側で独自に説明会を開催いただけるようトレーニング
- 「Sansanクイックスタートガイド」などの1本3分程の動画を、eラーニングのコンテンツとして提供
導入が完了した後は、チャーン(解約)を防ぐこともカスタマーサクセスの大きな役割です。Sansanでは解約兆候を見極めるために、お客さまの活用率を3つの項目でスコアリングしています。
- 契約IDに対してどれだけのIDがログインや名刺スキャンをしているか
- 1人当たりの名刺の読み込み枚数。※導入後2ヶ月で400枚までいかないと、チャーンする可能性が高くなる
- 週ごとの活用頻度
これらに関数をかけて出したスコアを100点満点で計測し、解約兆候が見られた場合は、その理由を確認した上で改めてオンボーディングをやり直しています。
もうひとつ重要なことがお客様とのリレーションを築くことです。これを「タッチスコア」といい、解約リスクを測る上で重要です。
具体的には、Sansanから送ったメールの開封率や架電時の通話率、eラーニング動画の再生回数など、コミュニケーションに対しての反応率を測っています。
最終的には、お客様が抱える課題解決にむけてユーザーの声をエンジニアに伝え、プロダクトを改善したり、活用の拡大支援を行うことで売上のアップに貢献することもカスタマーサクセスには求められます。
SmartHR
SmartHRでは人事労務や人材マネジメントの領域でSaaSビジネスを展開しています。
2015年のサービス提供開始から、5万社以上が登録し、サービス継続率は99%と非常に高くなっています。
そしてその背景にはカスタマーサクセスが重要な役割を担っており、徹底した「仕組み化」と「効率化」の姿勢が影響しているのです。
カスタマーサクセスグループでは、受注後のお客さまがサービスをうまく利用できるように支援をしています。
実際に行っている施策には以下のようなものがあります。
- 企業規模と導入フェーズごとにカスタマーサクセスチームを5つに細分化
- オンボーディングの流れと現状が一目でわかるよう、オリジナルリストで可視化
- 業務効率化のため、メジャ/ニッチ問わず外部のツールを積極的に導入
また、よく社員の目標設定とされるKPIについて、各チームのKPIは「お客さまの成功」を第一に考えて設計されており「アップセルによる売上金額のみを追うことはない」とのこと。
カスタマーサクセスの役割は、お客さまに「SmartHRを通じた成功」を経験してもらうことであり、継続率を追うことは前提として、同じKPIを追い続けるのではなく、臨機応変に設定し直しています。
これらの施策が、結果として高いサービス継続率に繋がっているといえます。
参考:https://www.fastgrow.jp/articles/smarthr-takahashi-sudare
参考:https://www.work-management.jp/blog/smart-hr-case#toc-3
弁護士ドットコム
弁護士ドットコムは「クラウドサイン」という、契約締結時にWeb上で完結できる、クラウド契約サービスを展開している企業です。
2015年にスタートし導入企業は3万社を突破しているが、その急成長の要がカスタマーサクセスです。
カスタマーサクセスへの取り組みを本格化する前と比較すると、クラウドサイン事業部の売り上げは10倍にもなっているという。
クラウドサインのサービスを立ち上げて間もなく、チャットサポートサービスを導入し、お客さまからの要望を受け付けるようにしました。
そこででた声は、Slackに自動連携させエンジニアやデザイナー、事業部長などカスタマーサクセス以外のメンバー全員がいただいた声を見るようにしています。
また、カスタマーサクセスとして顧客の成功を支援することは慈善活動ではなく、最終的には自社の事業収益にいかに貢献するかだと捉えた活動を行っています。
ほかにも、顧客の声を取りに行く活動も行っています。
クラウドサインというサービスは契約という業務が発生する企業の全てがターゲットとなり、事業収益上インパクトが大きいお客さまに対しては、関係構築のために定期的な訪問で状況のヒアリングを行っています。
カスタマーサクセス部門の人数は事業部全体の構成人数のうち約20%と、かなりのリソースを割いていますが、カスタマーサクセスに本格的に取り組む前と比べて、事業部の月間売り上げは10倍以上にもなっていることから、カスタマーサクセスに舵を切った会社としての判断は間違っていなかった言えるでしょう。
参考:https://www.itreview.jp/labo/archives/371
BtoC ~2選~
花王
花王は日用品を扱うメーカーです。
花王では「売って終わり」のビジネスから転換を図り、2021年1月にDX戦略推進センターを新設。
また、その下にカスタマーサクセス部を設置し「売って終わり」から「もう一度買ってもらう」の実現を目指しています。
新型コロナウイルス感染拡大をきっかけに、消費者の購買行動はECへシフトしていきました。
店頭販売が主だった花王としては直販チャネルの開拓・強化とUX(顧客体験)のためのデジタルツールやアプリケーションの開発・導入推進をDX戦略推進センターが行いました。
花王が運営するコミュニティサイト「Kao PLAZA」は会員同士が花王製品の情報交換をする場で、約180万人の会員(2022年6月時点)がいる同サイトには、毎日数千件の投稿があるといいます。
一方、DX推進センターからすれば、顧客の生の声を収集する場となり、顧客の声を実際に製品の訴求につなげているのです。
カスタマーサクセスは、SaaSを展開する企業やサブスクサービスを運営する企業が取り組めばいいわけではないことが、花王の取り組みからわかると思います。
日用品は他ブランドへの乗り換えハードルが低いため「消費者の声を聞き、商品に生かす」「価格以上の価値」が必要となるのです。
参考:https://www.itmedia.co.jp/business/articles/2206/08/news027.html
メルカリ
フリマアプリを運営しているメルカリ。利用したことがある人も多いのではないでしょうか。
メルカリでは、改善を支えるのは「顧客の声」として「VOC=Voice Of Customer」をとても大事にしています。
メルカリはフリマアプリとしては後発のサービスだからこそ、便利さを追求しサービスを銃汁させることに注力し、自然とカスタマーサクセスを突き詰めるようになったといいます。
そんなメルカリでは、以下のような施策を行っています。
- 問い合わせへの回答に対する、返信時間への徹底的なこだわり
- 月1回「VOCミーティング」を実施し、当月のVOCレポートから問い合わせのトレンドや改善提案について議論
- 行動データも含めて、多様なデータの取得・分析
VOCだけでなく、複数のデータを掛け合わせて顧客の真の要望を汲み取っています。
参考:https://forbesjapan.com/articles/detail/41547
カスタマーサクセスの事例から読み解く成功のポイント
ここまで紹介した事例から、カスタマーサクセス成功のために共通している点やポイントがみえてきました。
最後に、その成功事例から読み解くポイントを解説していきたいと思います。
これから導入を検討していたり、導入したがうまく機能できていないと感じている企業でも、ぜひチェックしてみてください。
顧客の声を聞く
紹介した事例のほとんどが、顧客の要望や声を大切にしており、顧客を正確に理解し、顧客の成功を考えていることが分かったと思います。
方法はさまざまで、問い合わせ内容を分析することや実際に顧客のもとへ訪問するなど、会社にとって最適な方法で多くの声を聞く必要があります。
実際に自社のサービスや製品を利用している顧客が、どのように感じ、また何に困っているか耳を傾け改善していくことが、継続的な利用やアップセルへと繋がっていくでしょう。
会社全体で取り組む
カスタマーサクセスの取り組みは、その部署でのみ行うのではなく、会社全体での取り組みが必要です。
実際に、カスタマーサクセスで上がってきた要望などを開発チームへ伝えたり、経営陣でミーティングを行い改善していくことで、顧客の満足度向上や売上増加となった事例もありました。
営業や開発、経営陣などが一体となり取り組むことで、製品やサービスの品質が向上し結果として、カスタマーサクセスの成功へ導きます。
ツールを活用した分析
カスタマーサクセスへ取り組む際には、ツールの活用も検討する必要があるでしょう。
実際に問い合わせをする顧客は、何か不満や要望がある場合がほとんどで、サービスに満足している顧客の声は受け取りにくいものです。
そうした課題には分析ツールを活用し「顧客がどのようにサービスを使用しているか」や「解約をした顧客と継続してる顧客の利用状況の違い」などを分析することが有効です。
顧客の声を聞くことに加えてツールを活用することで、より正確な情報を得ることができ、サービスの改善などに役立つため、ツールの導入も検討しましょう。
まとめ
ここまで「カスタマーサクセスの成功事例」「事例から読み解くポイント」を中心に解説してきました。
カスタマーサクセスの施策は、企業によりさまざまで自社に合った方法や運用を検討することが重要です。
カスタマーサクセスの導入は今後さらに拡大し、より多くの成功事例が出てくることでしょう。
事例から共通点を見つけ出し、自社に合った施策や運用方法を積極的に取り入れてみてはいかがでしょうか。