簿記2級商業簿記⑥:固定資産(その2)

簿記2級商業簿記⑤:固定資産(その2)についてご紹介します。
検定試験では第1問の仕訳問題、第2問の計算問題(結構難解)、第3問の決算問題に登場する重要事項になります。
YouTube動画もありますので、動画をご覧になりたい方はこちらです。

固定資産(その2)

1.保証率と改定償却率
2.売却、除却、廃棄、買換え
3.建設仮勘定

1.保証率と改定償却率

法人税法の減税措置として平成19年4月1日以降に取得した固定資産に対する減価償却において残存価額がゼロになりました。前日の平成19年3月31日までに取得した固定資産は、取得原価の10%を残存価額として減価償却の計算対象から外していましたが、それが撤廃されたことにより、平成19年3月31日までは取得原価の90%までしか減価償却費として費用化できなかったものが、平成19年4月1日からは取得原価の100%を減価償却費として費用化できるようになりました。それによって定率法の償却率の計算に変化が起きました。
まず、平成19年月31日までの償却率は取得原価の10%を残存価額とすることを織り込んだ償却率を、1―耐用年数√残存価額/取得原価で計算して計算していましたが、残存価額がゼロとなり√の中がゼロとなったことにより、250%償却法に変更されましたが、世界標準が200%償却法であることから平成24年より日本も200%償却法に変更になりました。しかし、残存価額を「ゼロ」とすることを前提とした200%償却法を適用しても耐用年数満了時に残存価額は「ゼロ」になりません。
例えば、耐用年数5年の場合の200%償却法の償却率は、定額法償却率(1÷5年=20%)の2倍(20%×200%=40%)で計算されることは前回の講義で学習しました。そこで、1年間使用すると有形固定資産の取得原価のうち40%が償却されて帳簿価額(取得原価―減価償却累計額)は1-40%=60%と計算されます。初回に取得原価の40%を償却すると、取得原価60%が帳簿価額として残ることになります。そして2年後は、帳簿価額60%×60%=36%、3年後は帳簿価額36%×60%=21.6%、4年後は帳簿価額21.6%×60%=12.96%、5年後は帳簿価額12.96%×60%=7.776%となり「ゼロ」にはなりません。
そこで無理やり「ゼロ」にするために考え出されたのが、改定償却率と保証率(いずれも問題文にて指示)です。使いやすい(便利な)改定償却率から先にみていきましょう。
耐用年数5年の場合の改定償却率は問題文で0.5と指示されます。0.5を分数に直すと2分の1となります。これは最後の2年間を均等償却して無理やり「ゼロ」にしましょう!ということです。また、耐用年数8年の場合の改定償却率は問題文で0.33と指示されます。同じように0.33を分数に直すと3分の1となりますので、これは最後の3年間を均等償却で無理やり「ゼロ」にしましょうということになりますが、3分の1は割り切れませんので問題文で与えられた0.33を掛けて減価償却費の計算を行います。決して3であってはいけません。端数は8年目の減価償却費で調整します。
最後に保証率ですが、耐用年数5年の場合は、最後の2年間を均等償却しますが、その償却額を取得原価で割って計算します。保証率を使って計算をするときは取得原価に保証率を掛けて計算した額の減価償却費つまり費用化額として保証しますよ!というものです。年々の減価償却額>保証額で減価償却を行っていくと、耐用年数5年の時は最後の2年間、耐用年数8年のときは最後の3年間が均等償却されることになりますので、改定償却率が使えれば特に保証率を使用しなくても差しさわりはありません。
なお、耐用年数経過後も使用を続ける場合は、備忘記録として帳簿価額1円を残しておかないといけませんで、耐用年数の最終年の減価償却費の額は1円を差引いて計算することになります。

2.売却、除却、廃棄、買換え

「売却」については3級の復習になりますが、「売却」以外の仕訳は「売却」の仕訳をベースに行いますのでしっかりと復習を行います。「除却」とは使わなくなった固定資産を倉庫にしまうことをいいます。使わなくなった固定資産が、その評価額(売却価値or利用価値)でもって貯蔵品勘定(資産)処理されることにご注意ください。「廃棄」は使わなくなった固定資産を捨てること、「買換え」はいらなくなった固定資産を下取り(売却)し、新しい固定資産を購入することをいいます。現在乗っている車を下取りにだして新車を購入することをイメージするといいでしょう。
それでは備品を例に「売却」、「除却」、「廃棄」および「買換え」についてみてきましょう。
まずすべての基本となる帳簿価額(簿価)についての復習です。固定資産の取得原価から期首減価償却累計額(a)と当期首から売却(除却、廃棄)までの期間の減価償却費(b)を差引いた価額を帳簿価額(簿価)といいます。
【基本形】有形固定資産の帳簿価額(簿価)のマイナスの仕訳
(借)減価償却累計額   a/(貸)備      品  取得原価
(借)減価償却費   b/

使わなくなった固定資産を「売却」するの場合の仕訳
【基本形】の仕訳>売却金額(差額で固定資産売却損が発生)
(借)減価償却累計額   a/(貸)備      品  取得原価
(借)減価償却費   b/
(借)未収入金 売却額/
(借)固定資産売却損 差額/
 ※帳簿価額>売却価額なので「固定資産売却損」(費用)が発生します。
【基本形】の仕訳<売却金額(差額で固定資産売却益が発生)
(借)減価償却累計額   a/(貸)備      品  取得原価
(借)減価償却費   b/(貸)固定資産売却益  差額
(借)未収入金 売却額/
 ※帳簿価額<売却価額なので「固定資産売却益」(収益)が発生します。
使わなくなった固定資産を「除却」する場合の仕訳 
※使わなくなった資産を倉庫にしまう!
【基本形】の仕訳+倉庫にしまった除却した資産の評価額(差額で固定資産除却損が発生)
(借)減価償却累計額   a/(貸)備      品  取得原価
(借)減価償却費   b/
(借)貯蔵品 評価額/
(借)固定資産除却損 差額/
 ※帳簿価額>評価額なので「固定資産除却損」(費用)が発生します。
使わなくなった固定資産を「廃棄」する場合の仕訳
【基本形】の仕訳(差額で固定資産廃棄損が発生)
(借)減価償却累計額   a/(貸)備      品  取得原価
(借)減価償却費   b/
(借)固定資産廃棄損 差額/
 ※帳簿価額=「固定資産廃棄損」(費用)が発生します。

3.建設仮勘定

建設途中の建物や、製造中の機械装置などへの前払金を建設仮勘定といいます。
建設中の建物などは高額になることが多いため発注時に請負金額の40%を前払いするという会計慣習があるために支払った前払金をいったん建設仮勘定として処理しておき、建物などが完成し、引渡しを受けたときに建設仮勘定から建物勘定などに振り替えます。なお、引渡しを受けた後、使用を開始すると減価償却が必要になりなす。
(1) 前払時:現金で前払いしたとき
(借)建設仮勘定   ×××/(貸)現金   ×××
(2)完成したとき
   仕訳なし
  ※完成だけでは「仕訳なし」です。
(2) 引き渡しを受けたとき ※引き渡し=鍵を受け取る
(借)建物   ×××/(貸)建設仮勘定   ×××
              /(貸)未払金など   ×××

【キーワード】
請負金額の一部を支払ったとき「建設仮勘定」、引き渡しを受けたら「建物」などに振り替え、使用を開始したら「減価償却」が必要になります。

【最後に】
最後まで簿記2級商業簿記⑤:固定資産(その2)を読んでいただきありがとうございます。
復習がてら3級の固定資産の減価償却や売却についても見てみるとより理解が深まりますよ!