簿記2級商業簿記⑤:固定資産(その1)についてご紹介します。
検定試験では第1問の仕訳問題、第2問の計算問題(結構難解)、第3問の決算問題に登場する重要事項になります。
YouTube動画もありますので、動画をご覧になりたい方はこちらです。
https://youtu.be/8TuoaPx-2fE
固定資産(その1)
1.固定資産の購入
2.減価償却
①定額法(3級の復習)
②定率法(狭義)、200%償却法
③生産高比例法
1.固定資産の購入
(1)固定資産とは
1年を超えて使用する目的で保有する資産を固定資産といい、①有形固定資産、②無形固定資産および③投資その他の資産の3つがあります。皆さんが3級で学習した固定資産は形があって目で見ることができる有形固定資産(建物、備品、機械装置、車両運搬具、土地など)でした。2級では、目で見ることができない無形固定資産(法律上の権利(特許権など)、のれん、ソフトウェアなど)や投資その他の資産(長期性預金、投資有価証券など)の3つについて学習します。
(2)有形固定資産の購入方法について
有形固定資産の購入方法(支払方法)には、一括払い(3級で学習済み)と割賦購入(分割払い)の2つの方法があります。
(3) 一括払い購入(3級の復習)について
資産の取得原価は、購入代価に付随費用を加えて計算します。購入代価とはその資産の本体価額をいい、付随費用とはその資産が自分のものとして使用できるようになるまでにかかった一切の費用(引取費用、関税など)をいいます。
(4) 割賦購入(分割払い)について
割賦購入の場合は、上記(3)一括払い購入についての取得原価(購入代価+付随費用)の他に分割払いによる金利が加算されます。金利の処理方法には①前払利息、②支払利息および③何もしないという3つの方法があります。順番にみていきましょう。
① 購入時に「前払利息」勘定(資産)で処理する方法
購入時にその利息分を「前払利息」勘定(資産)として処理しておき、割賦金支払時に「前払利息」勘定(資産)から「支払利息」勘定(費用)に振替える方法です。また、決算日≠支払日のときは、前の支払日の翌日から決算日までの期間利息を「前払利息」勘定(資産)から「支払利息」勘定(費用)へと振り替えます。
・購入日
(借)備品 取得原価/(貸)未払金 ×××
(借)前払利息 利息/
・支払日
(借)未払金 割賦金額/(貸)現金など 割賦金額
(借)支払利息 期間利息/(貸)前払利息 期間利息
・決算日(決算日≠支払日のとき)
(借)支払利息 期間利息/(貸)前払利息 期間利息
※支払日ではありませんが、期間利息の振替が必要です。
② 購入時に「支払利息」勘定(費用)で処理する方法
購入時に利息分を「支払利息」勘定(費用)で処理しておき、代金支払い時には利息の仕訳は行いません。決算日に、決算日の翌日以降の利息相当額を「支払利息」勘定(費用)から「前払利息」勘定(資産)に振替えます。
・購入日
(借)備品 取得原価/(貸)未払金 ×××
(借)支払利息 利息/
・支払日
(借)未払金 割賦金額/(貸)現金など 割賦金額
・決算日
(借)前払利息 期間利息/(貸)支払利息 期間利息
※決算日の翌日以降の利息相当分を「支払利息」勘定(費用)から「前払利息」勘定(資産)に振替ます
③ 購入時に何もしない方法
購入時に利息の仕訳を行わず、支払日に当該期間の利息を処理し、決算日≠支払日
のときは、前の支払日の翌日から決算日までの期間利息を「未払利息」勘定(負債)で処理します。
・購入日
(借)備品 取得原価/(貸)未払金 ×××
・支払日
(借)未払金 ×××/(貸)現金など 割賦金額
(借)支払利息 利息額/
・決算日(決算日≠支払日のとき)
(借)支払利息 期間利息/(貸)未払利息 期間利息
※支払日ではありませんが、期間利息の振替が必要です。
2.減価償却
(1) 減価償却の方法
資産は使用することによって価値が減少(減価)します。その価値の減少(減価)額を数学的に計算する方法として次の3つの方法があります。
①定額法(3級の復習)
②定率法(狭義)、200%償却法
④ 生産高比例法
(2) 減価償却の処理方法
定額法などで減価額が計算できたら、その金額をもとに仕訳を行いますが、減価額分を減価償却費勘定(費用)で借記します。その時の貸方科目を何にするかで①間接(控除)法と②直接(控除)法があります。
①間接(控除)法 ※3級の復習
(借)減価償却費 ××× /(貸)建物減価償却累計額 ×××
②直接(控除)法 ※固定資産を直接減額する方法です。
(借)減価償却費 ××× /(貸)建物 ×××
(3) 定額法(3級の復習)
減価償却費(1年分)=(取得原価―残存価額)÷耐用年数
※残存価額について
平成19年3月31日まで:取得原価×10%
平成19年4月01日以降:残存価額=0円
※詳細については動画をご覧ください。
(4) 定率法
減価償却費(1年分)=(取得原価―期首減価償却累計額)×償却率
※定率法(狭義)の償却率(取得原価の10%を残存価額とする場合)
(注)平成19年3月31日まで使用していた償却率です。計算方法が複雑で電卓では計算できないことから償却率は問題文で必ず与えられます。
詳細については動画をご覧ください。
※200%償却法の償却率(残存価額=0円の場合)
償却率(1年分)=定額法償却率×200%(2倍)
定額法償却率=1÷耐用年数
(注)実務では定額法も「率」で表されます。
(5) 定率法(狭義)※残存価額:取得原価の10%を前提
当期首に取得した備品(取得原価:50,000円、償却率20%)について定率法によって減価償却を行う。
1年目:(50,000円―0円)×20%=10,000円
※今回初めての減価償却なので、期首減価償却累計額は0円となります。
(借)減価償却費 10,000 /(貸)備品減価償却累計額 10,000
2年目:(50,000円―10,000円)×20%=8,000円
※今回2回目の減価償却なので、期首減価償却累計額10,000円を控除します。
(借)減価償却費 8,000 /(貸)備品減価償却累計額 8,000
3年目:(50,000円―18,000円)×20%=6,400円
※今回3回目の減価償却なので、期首減価償却累計額は(10,000円+8,000円)
あとは同様に行います。
(6) 200%償却法(その1)※残存価額=0円を前提
当期首に取得した備品(取得原価:50,000円、耐用年数5年)について200%償却法により減価償却を行う。
※200%償却法の償却率:1÷5年×200%=40%
1年目の減価償却費:(50,000円―0円)×40%=20,000円
2年目の減価償却費:(50,000円―20,000円)×40%=12,000円
3年目…
(注)今のところは、償却率が異なるだけで計算方法や仕訳に相違点はありません。
今のところはね。この後のことは次回の動画(その2)でご説明します。
(7) 生産高比例法 ※車両運搬具に適用されることが多い方法です。
減価償却費=(取得原価―残存価額)×実際走行距離÷走行可能距離
※(取得原価―残存価額)÷走行可能距離で1㎞あたりの減価償却費が計算されます。それに今年走った距離を掛けて今年の減価償却費を計算します。
車両運搬具(取得原価:50,000円、残存価額ゼロ、走行可能距離100,000km)を生産高比例法によって減価償却を行う。なお、今年の走行距離は20,000kmである。
(50,000円―0円)÷100,000km=0.5円/km
0.5年/km×20,000km=10,000円
(借)減価償却費 10,000 /(貸)車両運搬具減価償却累計額 10,000
【最後に】
最後まで簿記2級商業簿記⑤:固定資産(その1)を読んでいただきありがとうございます。復習がてら3級の固定資産の減価償却や売却についても見てみるとより理解が深まります。また、固定資産の問題はネット試験でも必ず出題されますのでしっかり復習してマスターしてください。