簿記2級商業簿記⑧:リース取引、無形固定資産

簿記2級商業簿記⑧:リース取引、無形固定資産についてご紹介します。
検定試験では第1問の仕訳問題、第2問の計算問題(結構難解)、第3問の決算問題に登場する重要事項になります。
YouTube動画もありますので、動画をご覧になりたい方はこちらです。

リース取引、無形固定資産

1.リース資産
2.無形固定資産

1.リース取引

2021年2月28日(日)、日商簿記検定試験の旧制度による最後の試験となる第157回日商簿記検定2級の第2問にリース取引の問題が出題されました。受験された方はさぞかし驚かれたと思います。お察ししたします。出題された内容は、ファイナンス・リース取引において、リース資産が火災によって滅失するという事件が起き、それに伴う処理が要求されました。その処理は、①契約によって残債の一括償還および②リース資産除却損の処理です。ひとつひとつ糸を手繰るように片づけていけば解答可能ですが、試験会場で初めてこの問題と遭遇したら、正直、焦ってどこから手を付ければいいかわからなくなってしまいます。では、新試験制度であるネット試験においてのレース取引が、今後どのように出題されるのかについても探りながらリース取引についてみてまいりましょう。

1. リース取引とは

貸し手(レッサー)が持っている物件を借り手(レッシー)に貸し付けて、借り手(レッシー)から使用料をいただく取引をリースといいます。レッサーとレッシーとの物件の貸付期間をリース期間と呼ぶことから「リース」と呼ばれるようになりました。
リース取引の種類については、ファイナンス・リースとオペレーティング・リースの2つに分けて処理がなされます。この種類分けの判断基準は、ノンキャンセラブルとフルペイアウトの2つです。(これ覚えておいてくださいね)
ノンキャンセラブルとは、解約不能の契約または解約は可能であるが多額の違約金が課せられることによって事実上解約不能ということです。この場合はファイナンス・リースとなります。また、フルペイアウトとはその物件がもたらす経済的利益のほとんどをレッシーが享受できること、例えば、耐用年数5年の物件を5年間リースする!ということを意味します。経済的利益を実質的に享受することができる場合もファイナンス・リースと判定されます。それ以外のリース取引がオペレーティング・リースとなりますが、具体的にはレンタカーや海外旅行時に借りるトランクなどがこれに該当します。

2.ファイナンス・リース

上述しましたノンキャンセラブルまたはフルペイアウトによって判断されるリース取引がファイナンス・リース取引になります。また、リース期間満了時に所有権が移転するか否かによって所有権移転型ファイナンス・リースと所有権移転外ファイナンス・リースに分類されますが、2級では所有権移転型ファイナンス・リースが出題されます。
所有権移転型ファイナンス・リースはリース期間が終了すると同時に所有権がレッサーからレッシーに移転するというファイナンス・リースをいいます。この場合、分割払いで物件を購入することと事実上同じことになりますので、所有権移転型ファイナンス・リースは分割払いで物件を「購入」することと同じになりますので、「購入」として扱われることになります。「購入」ですから決算日には他の有形固定資産と同様に減価償却をする必要があります。
では契約時、リース料支払時および決算日に行う会計処理についてみていきましょう。
ファイナンス・リースは分割払いで購入するのと同じですから、当然ながら「金利」が発生します。そこで契約時に金利を含んだ金額で処理する「利子込み法」と、金利を含まない金額で処理する「利子抜き法」の2つの処理方法が用意されています。「利子込み法」はリース料総額、「利子抜き法」は見積現金購入額で(借)リース資産×××/(貸)リース債務×××として仕訳します。そしてリース料支払日には(借)リース債務×××/(貸)現金など×××と仕訳しますが「利子抜き法」の場合は、(借)リース債務×××は、利子を含まない金額を支払回数で割って計算するのに対し、(貸)現金など×××は支払額(金利含む)で仕訳をしますので差額が生じます。その差額を(借)支払利息×××として仕訳します。最後に決算日の減価償却ですが、定額法の場合は、契約時の(借)リース資産×××の金額をリース期間で割って計算した金額で(借)減価償却費×××/(貸)リース資産減価償却累計額×××と仕訳します。この時、「利子込み法」の減価償却費の金額は、「利子抜き法」の減価償却費と支払利息の合計額と一致します。

3.オペレーティング・リース

ノンキャンセラブルやフルペイアウトの条件を満たさないリース契約をオペレーティング・リースといいます。オペレーティング・リースの会計処理は、リース料支払日に(借)支払リース料×××・(貸)現金など×××と仕訳するのみで、契約時と決算日は「仕訳なし」が答えになります。そして「支払リース料」勘定は費用となりますが、ファイナンス・リースの場合の「利子込み法」の減価償却費と「利子抜き法」の減価償却費+支払利息の額と一致します。ファイナンス・リースとオペレーティング・リースの違いがあっても最終的な費用額は同じとなります。

4.無形固定資産

「無形」であることから目に見ることのできない、でも1年を超えて使用することのできる資産を無形固定資産といい、①法律上の権利、②のれん、③ソフトウェアなどがあります。
法律上の権利は特許権、商標権などの知的財産権などがあり、取得時に(借)〇〇権×××/(貸)現金など×××として記録し、決算日にはその有効期間で償却をします。その際の償却方法は定額法、残存価額なし、直接法で行います。仕訳は(借)〇〇権償却/(貸)〇〇権×××となります。
のれんについては企業結合会計(後述)で学習しますのでここでは割愛します。
最後にソフトウェアですが、これはコンピュータを動かすソフトウェアに限定されますが、コンピュータ購入時にすでにインストールされているものは「備品」に含めて仕訳しますので、後から追加で購入したソフトウェアに限定されることにご留意ください。また、音楽ソフトや映像ソフトはソフトウェアに含まれません。購入時に(借)ソフトウェア×××/(貸)現金など×××、決算時には法律上の権利と同様に定額法、残存価額なし、直接法によって(借)ソフトウェア償却×××/(貸)ソフトウェア×××と仕訳します。

5.ネット試験での出題の傾向

リース取引につきましては、近々に会計処理方法が変更になりそうです。早ければ周知期間も含めて3年以内に施行されることになります。変更内容ですが、世界基準であるIFRS(国際財務報告基準)を任意適用している企業では、2020年3月以降行われる決算からノンキャンセラブル・フルペイアウトの判定基準が廃止され、契約金額などによる判断が行われるようになりました。これすなわちファイナンス・リースとオペレーティング・リースの区別がなくなることを意味します。よって、第157回日商簿記検定2級で出題されたような問題はネット試験では出題しにくいと考えています。保険程度に基本的な学習をしていれば問題ないのではないかと考えています。が少し不安はありますのでこの問題については追っかけていきたいと思います。

最後まで簿記2級商業簿記⑧:リース取引、無形固定資産を読んでいただきありがとうございます。
今回の題材は旧試験制度の最後となる第157回、第2問に出題されました。IFRSとの兼ね合いで今後どういう展開になってくるかわかりませんが、わかり次第またご報告させていただきます。