簿記2級商業簿記④:有価証券についてご紹介します。
検定試験では第1問の仕訳問題、第2問の計算問題(結構難解)、第3問の決算問題に登場する重要事項になります。
YouTube動画もありますので、動画をご覧になりたい方はこちらです。
目次
1.有価証券
1.簿記で扱う有価証券には、「株券(株式)」と「債券」の2つがあります。
(1) 株券(株式)は株式会社のオーナーの証で、株式会社の利益の一部を配当金として受け取る権利を有します。
※配当金領収書(通貨代用証券)を受け取った時の仕訳
(借)現金 ×××/(貸)受取配当金 ×××
(2) 債券(国債券、社債券など)は、国や株式会社などが発行する証書、すなわち借用証書であることから、債権者は金利を受け取る権利を有します。
※公社債の利札(利払日が到来したとき)の仕訳
(借)現金 ×××/(貸)有価証券利息 ×××
2.有価証券の種類
有価証券は、その保有目的によって次の4つに分類されます。
(1) 売買目的有価証券(株券、債券) …売買目的で保有
(2) 満期保有目的債券(債券のみ) …満期まで保有
(3) 子会社株式、関連会社株式(株式のみ) …他の会社を支配する目的で保有
(4) その他有価証券(株券、債券) …上記以外の目的で保有
【ヒント】「有価証券」という名称について
株券(株式)と債券の両方がそろった状態を「有価証券」と呼称します。
決算時に行う評価の際、「有価証券」と呼称されるものは時価法が適用されます。
覚えておくと便利ですよ。
【貸借対照表表示】
売買目的有価証券
Ⅰ流動資産の部に「有価証券」として表示します。
満期保有目的債券
Ⅱ固定資産、3.投資その他の資産の部に「投資有価証券」として表示します。
ただし、満期日が決算日の翌日から起算して1年以内となったものは、Ⅰ流動資産の
部に「有価証券」として表示します。
子会社株式、関連会社株式
Ⅱ固定資産、3.投資その他の資産の部に「関係会社株式」として表示します。
その他有価証券
Ⅱ固定資産、3.投資その他の資産の部に「投資有価証券」として表示します。
ただし、満期日が決算日の翌日から起算して1年以内となった債券については、
Ⅰ流動資産の部に「有価証券」として表示します。
3.売買目的有価証券
(1) 購入時
① 株券(株式)の場合
例)売買目的によりA社株式100株を@10,000円で購入し、代金は現金で支払った。⇒100株×@10,000円=1,000,000円
(借)売買目的有価証券 1,000,000/(貸)現金 1,000,000
② 債券の場合
債券は、他の金融商品との金利差などにより額面金額と発行価額(購入金額)が異なる場合があります。今回は額面100円>発行95円(割引発行)の例でみていきます。
例)売買目的によりA社の社債額面100万円を100円に付き95円で購入し、代金は現金で支払った。⇒1,000,000円÷100円×95円=950,000円
(借)満期保有目的債券 950,000/(貸)現金 950,000
③ 債権の端数利息
【前提】債権の利払い⇒利払日(利払日以外に支払い義務なし)
⇒では、利払日と利払日の間に債権の譲渡(A→B)があったらどうするか?
答え)直近の利払日の翌日から譲渡日までの利息(50日分)を、購入者が立替払いします。
購入時:Bの仕訳
(借)売買目的有価証券 ×××/(貸)現金 ×××
(借)有価証券利息 50日分/
次の利払日:Bの仕訳
(借)現金 ×××/(貸)有価証券利息 半年分
※購入時に50日分の利息を立替払いし、次の利払日に半年分の路側を受け取ることから、その差額が購入者の利息(収益)となります。
(2) 売却時
① 取得原価≦売却価額
(借)現金など ×××/(貸)売買目的有価証券 ×××
/(貸)有価証券売却損益 ×××
※ネット試験では「有価証券売却益」が指定されることがあります。
② 取得原価≧売却価額
(借)現金など ×××/(貸)売買目的有価証券 ×××
(借)有価証券売却損益 ×××
※ネット試験では「有価証券売却損」が指定されることがあります。
(2) 決算時
① 時価法 決算時に、決算時の時価に評価替えする
② 処理方法
切放法 取得原価 ⇒(決算時)期末時価
洗替法 取得原価 ⇒(決算時)期末時価 ⇒(翌期首)取得原価
〔ヒント〕「有価証券」と呼称されるものは時価法が適用されます。
売買目的有価証券 切放法 or 洗替法
その他有価証券 洗替法のみ
(3) 時価法(切放法)
① 決算日
イ.取得原価≦期末時価
(借)売買目的有価証券 ×××/(貸)有価証券評価損益 ×××
※ネット試験では「有価証券評価益」が指定されることがあります。
ロ.取得原価≧期末時価
(借)有価証券評価損益 ×××/(貸)売買目的有価証券 ×××
※ネット試験では「有価証券評価損」が指定されることがあります。
(4) 時価法(洗替法)
① 決算日
イ.取得原価≦期末時価
(借)売買目的有価証券 ×××/(貸)有価証券評価損益 ×××
ロ.決算日の翌日(翌期首):再振替仕訳
(借)有価証券評価損益 ×××/(貸)売買目的有価証券 ×××
4.満期保有目的債券
(1)購入時
例)満期保有目的によりA社の社債額面100万円を、100円に付き95円で購入し、
代金は現金で支払った。
⇒1,000,000円÷100円×95円=950,000円
(借)満期保有目的債券 950,000/(貸)現金 950,000
※額面より発行価額が低くする理由(金利の調整)については動画をご覧ください。
5.決算時
① 原価法 取得時の原価でもって貸借対照表価額とする
② 償却原価法
額面金額≠取得原価 かつ 金利の調整
⇒ 償却原価法が適用される
例)額面100円に付き95円で購入した。満期まで5年ある。
債券の場合は購入時に購入額を支払えば、満期に額面で償還されます。よって本問の場合は、95円支払って5年後に100円が返ってくることになります。そして差額の5円は5年間の利息に相当しますので5円÷5年=1円/年を有価証券利息勘定(収益)として決算日に処理することになります。この計算方法を償却原価法(定額法)といいます。満期保有目的債券とその他有価証券の債券に適用されます。
なお、その他有価証券には決算時に時価法(洗替法)が適用されますのでご注意ください。
(練習問題)
1.満期保有目的によりA社の社債額面100万円を100円に付き95円で購入し、
代金は現金で支払った。(満期5年)
⇒1,000,000円÷100円×95円=950,000円
(借)満期保有目的債券 950,000/(貸)現金 950,000
2.決算を迎えた。(1,000,000円―950,000円)÷5年=10,000円
(借)満期保有目的債券 10,000/(貸)有価証券利息 10,000
3.利払日(参考) ※期限の到来した公社債の利札
(借)現金 ×× /(貸)有価証券利息 ××
6.子会社株式、関連会社株式 ※関係会社株式=子会社株式+関連会社株式
(1)購入時(子会社株式の例)
(借)子会社株式 ×××/(貸)現金など ×××
(2)決算日:原価法なので何もしません
7.その他有価証券
【株券、株式の場合】
(1) 購入時
(借)その他有価証券 ×××/(貸)現金など ×××
(2) 決算時(時価法:洗替法)※取得原価≦期末時価
(借)その他有価証券 ×××/(貸)その他有価証券評価差額金 ×××
(3) 翌期首(再振替仕訳)※洗替法
(借)その他有価証券評価差額金 ×××/(貸)その他有価証券 ×××
【債券の場合】
(1) 購入時
(借)その他有価証券 ×××/(貸)現金など ×××
(2) 決算時(償却原価法)
(借)その他有価証券 ×××/(貸)有価証券利息 ×××
(3) 決算時(時価法:洗替法)※償却原価≧期末時価
(借)その他有価証券評価差額金 ×××/(貸)その他有価証券 ×××
(4) 翌期首(再振替仕訳)
(借)その他有価証券 ×××/(貸)その他有価証券評価差額金 ×××
【最後に】
最後まで簿記2級商業簿記④:有価証券を読んでいただきありがとうございます。
2級で登場した有価証券は検定試験で毎回出題されています。特に第2問で出題されるときは難題が多いのでしっかり練習してください。保有目的によって4つに区分されますので、その一つ一つを大切に、また混同しないようしっかりマスターしてください。